世界陸上2017ロンドン大会。ウサイン・ボルト(ジャマイカ)の引退試合となることでも注目を集めるこの大会がまもなく幕を開けます(8月4日~13日まで)。ボルトは最後まで最速の男として勝負の世界を去るのでしょうか。そして、日本人選手たちは夢の9秒台に手が届くのでしょうか?
注目の大会は8月4日に初日を迎えます。ブックメーカー「Paddy Power」(パディー・パワー)がボルトの最後を飾るこの大会の勝敗オッズを発表していますので、ご紹介していきます。
ライトニング・ボルトが100mを誰よりも速く駆け抜ける
【世界陸上2017ロンドン大会男子100mオッズ】
※オッズは27日午前8時現在
金メダル最有力はもちろんウサイン・ボルト。オッズは1.44倍となりました。続く2番手には3選手が並列する展開に。リオ五輪100m銅メダルのアンドレ・デグラッセ(カナダ)、同じく銀メダルのジャスティン・ガトリン(アメリカ)、リオ五輪4×100mリレー金メダルのヨハン・ブレーク(ジャマイカ)の3人が7.00倍でつけています。5番手はアメリカの新鋭クリスチャン・コールマンで10.00倍。6番手は67.00倍と大きな数字がつけられており、優勝候補は上記5人に絞られているとみてよいでしょう。残念ながら現在のところ日本人選手にオッズはつけられていません。
注目の男子100Mは、日本時間の5日午前3時から予選、同日午前4時20分から準決勝、そして決勝は6日午前5時45分から行われます。
男子200m、400mはバンニーキルクの独壇場となるか?
【世界陸上2017ロンドン大会男子200mオッズ】
※オッズは27日午前8時現在
200m、400mともに金メダル最有力はリオ五輪400m金メダリスト、ウェイド・バンニーキルク(南アフリカ)が挙げられました。ブックメーカー「Paddy Power」発表のオッズによれば、200mでは1.72倍、400mでは1.08倍がつけられています。リオ五輪では400mの世界記録を17年ぶりに更新したバンニーキルク。ボルトのいない200m、そして主戦場の400mで2冠を達成となるか注目です。
その他の選手は、200mではアンドレ・デグラッセが100mに続いて2番手でオッズは4.33倍、3番手にヨハン・ブレークで4.50倍、4番手はボツワナのイサーク・マクワラで6.00倍となりました。
【世界陸上2017ロンドン大会男子400mオッズ】
※オッズは27日午前8時現在
400mではフレッド・カーリー(アメリカ)とイサーク・マクワラ(ボツワナ)が2番手タイでオッズは8.00倍。3番手がラシュワン・メリット(アメリカ)で10.00倍。100mでのボルト以上の支持がバンニーキルクに集まっているようです。
ボルト、最後の舞台に臨む
世界最速の男ウサイン・ボルト。その伝説がついにこの世界陸上で終焉を迎えようとしています。まもなく31歳となるボルトは今大会を現役最後の舞台に選びました。
今大会では4連覇中の200mは欠場し、100mと4×100mリレーに絞って参加すると発表しています。2009年世界陸上男子100mでは9.58秒の世界記録をたたき出し、世界を驚かせたボルト。今シーズンも7月21日に行われたダイヤモンドリーグモナコ大会で今季自己最高の9.95秒を出しており、その「雷速」ぶりの健在を示しました。
ボルトが狙うのは「勝ち逃げ」でしょう。誰にも負けぬまま、誰よりも速いまま、陸上競技の世界を去る。そうすれば、ボルトは永遠に語り継がれる伝説となることでしょう。世界一の男の終幕は、彼が思い描くような完璧なものとなるのか注目したいところです。
<世界陸上2017競技日程(世界陸上公式HP)>
※日本時間は「MY TIME」で表示されています。
男子100m日本代表はサニブラウン、多田、ケンブリッジの3人に
男子100mの日本代表選手は3人。2015年に続く2回目の出場となるサニブラウン・ハキーム(東京陸協)に加え、初出場のケンブリッジ飛鳥と多田修平(関西学院大学)が選ばれました。日本短距離界のエース桐生祥秀(東洋大学)は6月24日に行われた日本陸上競技選手権男子100m決勝でまさかの4着、対抗馬とみられていた山県亮太(セイコーホールディングス)も6着となり、世界陸上代表の座を逃しています。同大会はサニブラウンがコースレコードの10.05秒で優勝、2位に多田で10.16秒、3位にケンブリッジが10.18秒と続きました。
200mの代表にはサニブラウンと2013年モスクワ大会以来の参加となる飯塚翔太(ミズノ)、400mの代表にはリオ五輪400mリレー代表の北川貴理(順天堂大学)が選ばれています。
ボルト打倒のラストチャンスに挑むサニブラウン
2015年に続き、2回目の世界陸上出場となるサニブラウン。前回大会は200mでは若干16歳で準決勝に進出し、新たな超新星の出現に世間を沸かせました。今大会では、200mに加えて短距離の花形100mにも日本人最高タイムで出場。決勝進出や9秒台の達成に大きな期待がかかります。
海外を拠点に活動するサニブラウンはここ数年で肉体的にも精神的にも大きく成長を遂げました。そんな彼を支えたのは偉大な練習パートナー、ティアナ・バートレッタの存在です。ロンドン五輪とリオデジャネイロ五輪で3つ、世界陸上でも2つの金メダルを獲得しているこの大先輩と過ごす鍛錬の日々。それが幼かったサニブラウンを強く鍛え上げました。そして今、日本を背負うエースとして、世界に立ち向かいます。
ウサイン・ボルトが初めて金メダルを獲得したのは2008年の北京五輪。21歳の時です。まだ18歳のサニブラウンが順調に成長を続ければ、彼に並び、そして追い越すことすら不可能ではありません。ボルトと直接対決する最後の機会となるこの世界陸上は、サニブラウンが新世代の頂点に名乗りを上げる絶好の機会です。
シンデレラボーイ多田はどこまで上り詰めるか
日本陸上界に突如現れたスーパースター、それが多田修平です。21歳の同選手はつい先日までは自己ベスト10.22秒と、そこまで目立つ選手ではありませんでした。ところが6月10日、彼の世界が変わりました。追い風参考記録(4.5m)ながらも、日本国内競技内では日本人史上初となる9秒台、9.94秒のタイムをたたき出したのです。同大会の決勝でも日本歴代8位となる10.08秒を出し、まぐれでないことを証明しました。
そんな彼の躍進の契機は、今年2月のアメリカ遠征。テキサスで、ボルト以前の世界最速の男、アサファ・パウエル(ジャマイカ)と3週間ともに練習を行いました。その際にパウエルからスタートについてのアドバイスを受け、走り方が大きく変わったといいます。その結果、5月に日本で行われたセイコーゴールデングランプリ陸上川崎ではアテネ五輪男子100m金メダリストのジャスティン・ガトリン、ケンブリッジ飛鳥に続いて3位入賞。ガトリンが多田のスタートのうまさを名指しでほめるほどの成長を遂げました。
188cm78kgのサニブラウンや180cm76kgのケンブリッジら、日本人離れした体格の選手に注目が集まる中、176cm66kgと一回り小さな体をした多田。アフリカンに支配された短距離の世界に食い込んでいくことができるでしょうか。
ケンブリッジ飛鳥、飛翔の時
日本選手権では3位となったケンブリッジ。痛めた右ハムストリングスは快方に向かっており、ロンドンの地では万全の状態で臨めるはずです。
ジャマイカにルーツを持ち、幼少時はサッカーに精を出すなど、ボルトと共通点の多いケンブリッジ。2014年には単身父の母国ジャマイカを訪れ、ボルトが所属するレーサーズトラッククラブで100m9.69秒の記録を持つヨハン・ブレークらと練習を行っています。リオ五輪男子100mリレーではアンカーでボルトとデッドヒートを繰り広げ、銀メダル獲得に貢献しました。
ケンブリッジの父親の故郷ジャマイカはボルトのみならず多くのランナーを輩出している短距離大国です。100mの世界記録歴代10傑には男女ともに5人も名を連ねているほど。そんな最強国の血を引くものとして、9秒の世界に日本人として初めて達することが彼にかかる大きな期待となるでしょう。