日本のクラシック、春のG1戦線や、ドバイミーティングを前に欧州で開催されるのが春の一大イベントがグロースターシャーのチェルトナム競馬場で開催される「チェルトナムフェスティバル」です。
日本では馴染みのない「チェルトナムフェスティバル」ですが、3月13日から4日間で27レース、延べ12個のG1レースが開催されるすべてが「障害競走」と、日本ではまずお目にかかることが出来ない障害馬の祭典であり、チェルトナムフェスティバルにはイギリスとアイルランド両国や、欧州中から一流のジャンパーたちが集うこととなります。
実は欧州では平地競走と並んで人気の高いのが障害競走。この四日間で動く金額は数百億円にも上り、イベントのレース開幕とともにスターターがテープを上げる瞬間に観客から湧き起こる大歓声には「チェルトナムロアー」という名称がついているほどです。
<チェルトナムフェスティバル2018レースオッズ(ウィリアムヒル発表)>
またその4日間の中では「アマチュア騎手限定」「見習い騎手限定」「ノービス限定」などといった、やや風変わりな条件戦も行われます。
そんな欧州一大イベント、チェルトナムフェスティバルをより楽しんでいただくために、まずは障害競走について少しご説明いたしましょう。
障害競走と一口に言えど、実は「ハードル」「チェイス」の二種類が存在します。
ハードルは「置き障害競走」と呼ばれており、移動式の障害を設置して行われる競走となります。その為、普段の平地競走用のコースが使用でき、障害のサイズも小さいものが多いためよりスピード感のあふれる障害競走となります。
一方でチェイスは「固定障害競走」と呼ばれており、障害競走用にコースが作られているため多くの障害がハードルに比べてサイズが大きく、より飛越するのが困難となります。その為、よりダイナミックなレースを観戦することが出来ます。
同じ障害といえども全く異なった性質を持つハードルとチェイス。
今回は「ハードル競走」から、初日に行われるチャンピオンハードルチャレンジトロフィー(海外G1、約3319㍍・ハードル)。そして「チェイス競走」から、最終日に行われるチェルトナムゴールドカップチェイス(海外G1、約5331㍍・チェイス)の、フェスティバルでも大注目の2レースをご紹介します。
チャンピオンハードルチャレンジトロフィー2018
一流のハードルホースたちが鎬を削るのがチャンピオンハードル。3319mという距離は日本の障害レースから考えるとそれなりに距離があるように思えますが、欧州諸国では「短距離側」に分類されます。
有力出走馬のご紹介に移る前に、まずはブックメーカー「William Hill(ウィリアムヒル)」が発表しているオッズをご確認いただきましょう。
【チャンピオンハードルチャレンジトロフィー2018オッズ】
※オッズは7日午前11時現在
<ウィリアムヒル 登録方法>
1.44倍と断トツの評価となっているのが、フランスのBuveur d’Air(ヴュベールデール)。
現在9連勝中であり、昨年のチャンピオンハードル優勝馬でもあります。同馬の圧倒的な強さも相まってか、前走はなんと3頭立て。この9連勝中でも6頭以上で行われたレースはわずかに3レースのみ。
その前走のLR戦も、最後は差こそ詰められながらも手綱はほぼ持ったままで完勝と、7歳になってなおその強さに磨きがかかってきていると言え、連覇に期待がかかります。
2番手評価の6.50倍となっているのがアイルランドの古豪にして、その強さから「Faugheen The Machine」の愛称を持つ、Faugheen(フォヒーン)。2015年にチャンピオンハードルを制した10歳馬です。
評価の上ではBuveur d’Air に後塵を拝する形となっていますが、2016年、2017年のチャンピオンハードルに関しては決して敗れた訳ではなく、昨年の冬まで2年間長期休養を挟んでいた為。そこから、復帰戦の勝利を含む、3戦1着1回2着1回と順調な仕上がりを見せています。
これまで述べ20戦ものハードル競走を経験し、3着以内が19回と抜群の安定性を誇るのがMy Tent Or Yours(マイテントオアユアーズ)。こちらは先ほどのFaugheenよりさらに年上の11歳馬です。オッズは11.00倍となっています。
戦績が物語るように実力的には申し分ないMy Tent Or Yoursなのですが、チェルトナムフェスティバルの勝利の女神からはよほど見放されているのか、チャンピオンハードルに参戦した2014年、2016年、そして昨年の2017年と「3戦すべて2着」という歯がゆい結果に。
日本の競馬に慣れていると、11歳という年齢から「そろそろ厳しいのでは」と感じるところですが、昨年末チェルトナムで行われたG2戦で実に3年ぶりとなる勝利。ここにきてさらに円熟味が増してきたといったところでしょう。
その他の有力出走馬としては、チェイス、ハードルの両条件で勝利経験のあるYorkhill(ヨークヒル)が13.00倍。通算39戦を誇るドイツのタフネスホースWicklow Brave(ウィックロウブレイブ)が15.00倍で上位評価となっています。
チェルトナムゴールドカップ2018
全長5300m以上の超ロングディスタンスで行われるのがチェイス競走のチェルトナムゴールドカップ。冒頭でご紹介したようにチェイスで行われるため距離が長いだけでなく障害も大きいものとなります。
その為、実際にレースを走ることとなる競走馬はもちろんのこと、ジョッキーたちのスタミナ、精神力、集中力が試されるレースとなっています。
チャンピオンハードルに比べると、こちらはかなり混戦模様。まずはブックメーカー「William Hill(ウィリアムヒル)」が発表しているオッズをご確認いただきましょう。
【チェルトナムゴールドカップ2018オッズ】
※オッズは7日午前11時現在
<ウィリアムヒル 登録方法>
押し出されるような形ではありますが、一番手評価となったのはアイルランドのMight Bite(マイトバイト)。2017年からチェイスへ本格転向を敢行。その後は8戦6勝と高い勝率を誇っています。
やや心配なのが、チェイスでの活躍が最近であるために一線級との対決が少ないという点。
昨年のチェルトナムフェスティバルにも参戦しましたが、出走したのはノービス戦(現在の障害シーズン(前年10月から4月まで)開始以前にハードル競走ならハードル、チェイス競走ならチェイスで勝利経験のない障害馬のためのレース)である、RSAチェイス。今回は相手関係がどうかという点でしょう。
6.50倍の評価で続くのが、昨年のゴールドカップ3着入線を果たしたアイルランドのNative River(ネイティヴリバー)。こちらも怖い存在です。
同馬の持ち味はなんといっても「多頭数レースに強い」という点。海外の障害競走においては、ビッグレースともなると20頭前後によってレースが争われることもしばしば。そうなれば、レース展開が少頭数と変わることはもちろん、途中での落馬やリタイアも発生するため非常にタイトなものとなります。
そんな中で19頭立て以上のレースで4戦2勝2着1回と無類の強さを誇っているのがNative River。今年のゴールドカップは頭数が多くなりそうな予兆が見られることを考えると、この馬の出番も十二分にあり得るでしょう。
昨年のゴールドカップの優勝馬がドイツのSizing John(シジングジョン)。今回は3番手評価となる7.00倍となっています。
これまでの戦績を考えれば、7.00倍はかなり高いオッズとも考えられますが、このオッズには前走で1着馬から30馬身以上離された7着という結果がかなり色濃く反映されているといえるでしょう。
ですが実力や実績は今回の出走予定馬の中でもトップクラスであることに変わりはありません。しっかりと調整を積んで順調ならば、上位争いに食い込める一頭でしょう。
その他には、チェルトナム初参戦ながらも、昨年のアイルランドで最も格式高いグランドチェイスを制したOur Duke(アワデューク)が8.00倍の4番手となっています。
障害馬たちの祭典、チェルトナムフェスティバルは3月11日~3月14日の4日間開催されます。