現在の世界競馬において一種のトレンド的な存在となっているのが「レースの総賞金額」。
3月末に開催される「ドバイワールドカップ」や、出走登録者が出走枠を購入し、賞金額などをプールする現在世界最高賞金額レースとなっている「ペガサスワールドカップ」。
2019年の2月にはサウジアラビアにおいて「第1回キング・アブドゥルアズィーズ・ホースチャンピオンシップ」が開催予定。メインレースの総賞金はドバイワールドカップやペガサスワールドカップを超えるとされる「16億~22億円」とまで言われており、競馬界におけるレース賞金額争いはとどまることを知りません。
こういった、ビッグレースに肩を並べるのが、オーストラリアはロイヤルランドウィック競馬場で開催される「芝の最高賞金額レース」ジ・エベレスト(海外、1200㍍・芝)です。
日本時間の10月13日(土)午後2時15分に発走予定です。
2017年に第一回を迎えたジ・エベレストは、ペガサスワールドカップと同じように希望者が出走枠を購入するタイプのレース。賞金総額は約8億6000万円であり、1着賞金は約5億円。これだけの賞金額ということもあり、出走枠は1枠あたり5000万円とかなりの高額です。
ダート2000mにて開催されているペガサスワールドカップに比べると、日本馬や香港馬の遠征も十二分に有り得そうな条件ではありますが、スプリンターズステークスとやや日程が被ってしまっているのが残念な点でもあります。
第一回となる昨年はとある日本に縁のある一頭が大活躍を見せたジ・エベレスト。今年もその名を出走馬の中に連ねています。そんな注目馬を含め出走各馬をご紹介する前に、まずはブックメーカー「10Bet」のオッズをご確認いただきましょう。
【ジ・エベレスト2018オッズ】
※オッズは10日午前8時現在
<10Bet 登録方法>
非常に割れ加減のオッズとなっていますが、まずご紹介しておきたいのは昨年の3着馬、ブレイブスマッシュ(Brave Smash)。
評価こそ15.00倍とやや低めではありますが、今回出走に至るにはこんな一幕がありました。
当初、枠を所持していなかった、ブレイブスマッシュの所有者であるオーストラリアンブラッドストック。しかし、そんな陣営に枠を譲ったのはあのウィンクスを管理する、C.ウォーラー調教師でした。
譲渡に際して「非常に幸いにも、我々はジ・エベレストの出走権利を持ち、参加させる機会を得ていた。しかし、ブレイブスマッシュほどの実力馬が我々の権利を行使する機会を持てるというのであれば、決断することに迷いはない」と、コメント。
この動きには、C.ウォーラー調教師が日本を含めた海外の競走馬をオーストラリアに輸入し、新たな血の取入れを行っているブラッドストックに対しての大きな期待を込めてという裏もあってのことでしょう。それでも「ブレイブスマッシュならば」という文言から考えるに、やはり競走馬としてのレベルも、現地の一流調教師に認められているという裏付けにもなります。
5歳になった2018年には、2月に悲願のG1レースを制覇。更にここ3走は複勝圏内をキープと状態面も上々。昨年が1馬身差だったことを考えれば、C.ウィーラー氏の言う通り十二分に可能性がある一頭と言えるでしょう。
オッズ上で6.50倍の一番手評価となっているのがトラピーズアーチスト(Trapeze Artist)。
2018年の春先にはオールエイジドステークス(海外G1、1400㍍・芝)、T・J・スミスステークス(海外G1、1200㍍・芝)を連勝という充実ぶり。この実績を買われて一番手評価といったところでしょう。
今シーズンはテオマークスステークス(海外G3、1300㍍・芝)で3着。更に、プレミアステークス(海外G2、1200㍍・芝)においても4着とやや物足りない結果。
もともと、夏場には実績が落ち込む同馬であることを考えれば、織り込み済みの結果かもしれませんが、思わぬ大敗を喫するときもあるムラっけのある一頭だけに、評価が難しいところでもあります。
後半シーズン初戦のコンコルドステークス(海外G3、1000㍍・芝)を制してジ・エベレストに挑むのが、昨年の覇者、レッドゼル(Redzel)。オッズは6.50倍となっています。
ところが、こちらもトラピーズアーチストと同じくプレミアステークスで5着と敗北。この結果を受けてのことか、オッズ的にも実績を考えればかなり控えめとなりました。
このプレミアステークスの結果を受けて、一気に上に挙げた2頭とオッズ上で7.50倍と比肩することとなったのが勝ち馬のサンタアナレーン(Santa Ana Lane)。
実はサンタアナレーン自身、これまでG1レースを3勝している実績の持ち主なのですが、そのいずれも「伏兵評価」にとどまっていながらの勝利。そして今回のプレミアステークスも、8頭中6頭ものジ・エベレスト出走予定馬が顔をそろえ、その中でもっとも人気薄だったのがこのサンタアナレーンでした。
とうとう、ジ・エベレストでは有力サイドとして数えられることとなった同馬。果たして人気サイドでもその爆発力を発揮できるでしょうか。
昨年のジ・エベレスト2着馬である6.50倍のオッズがついているベガマジック(Vega Magic)。
ジ・エベレスト以降はやや精彩を欠き、更には雷に驚いて柵に激突、長期離脱となってしまったベガマジックでしたが、前々走のG3戦を見事に完勝、迎えた前走のメムジーステークス(海外G1、1400㍍・芝)では、4着と敗れはしたものの、上位3頭が道中後方に位置していた馬たちで決着。
前が総崩れであったことを考えれば上々の結果だったともとらえられるでしょう。前目でマイペースに持ち込んだ際の強さはいまだに健在です。
その他、アイルランドのA.オブライエン厩舎が送り込むニュージーランド短距離G1レース3勝の実績馬、ユーエスネイビーフラッグ(U S Navy Flag)が7.50倍と上位評価。世界中を駆ける名伯楽の管理馬がとうとうジ・エベレストにも進出。こちらも注目です。
前哨戦が波乱の結果となった為に、一気に混戦ムードが高まった今年のジ・エベレスト。5億円もの賞金を手にするのはどの馬か、大注目の一戦です。