3月と言えば、何といっても大学バスケットボールが全米を熱狂させる月です。「マーチマッドネス」の季節がついに今年もやってきました。NCAAカレッジバスケットボールトーナメント2016が日本時間の16日にファーストフォーを皮切りに開幕します。
1939年にスタートしたNCAAカレッジバスケットボールトーナメントは今回で77回目を迎える歴史のある大会で、これまで68チームが全米No.1の座をかけてファイナル(決勝)を戦いました。NBAのスター選手であった現NBAアナリストのチャールズ・バークレー氏はこう言います。「25チームくらいがファイナルフォーに進出する可能性を秘めており、そしてそのうちの10チームがこのトーナメントを制する可能性がある」。
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2016年のトーナメントの組み合わせ(Bracket)を決めるサンデーセレクションが現地13日(日本時間の14日)に行われ、出場68チームの顔ぶれと対戦相手が決定しました。トップシードにはカンザス大、オレゴン大、ノースキャロライナ大、そしてヴァージニア大の4チームが選出されました。
【NCAAカレッジバスケットボールトーナメント2016トーナメント表(組み合わせ)】
※「NCAA公式サイト」から抜粋
まずは、ファーストフォー(First Four)と呼ばれるワイルドカードで出場を決めた8チームが現地15日と16日に試合を行います。そして、それを勝ち抜いた4チームが4つの地区(サウス、ウェスト、イースト、ミドルウェスト)に分かれて行われるトーナメント表64枠に入り、1回戦が17日と18日に行われます。以降、2回戦が19日と20日、スウィート16(Sweet 16)と呼ばれる3回戦が24日と25日、エリートエイト(Elite Eight)と呼ばれる準々決勝が26日と27日、4つの地区のチャンピオンが決まるファイナルフォー(Final Four)が4月2日、そして今年の全米チャンピオンを決めるチャンピオンシップゲーム(決勝)が4月4日に行われます(日時は現地時間)。
昨シーズンのトーナメントでは、決勝でデューク大がウィスコンシン大を68-63で破り5年ぶり5回目の全米王者となりました。そのデューク大は今回ウェスト地区の第4シードに入り、ノースカロライナ大ウィルミントン校と1回戦で対戦します。一方、イースト地区の第7シードのウィスコンシン大はピッツバーグ大と初戦で戦います。
【NCAAカレッジバスケットボールトーナメント2015ハイライト】
組み合わせは決定しました。あとはどこが今季の全米チャンピオンになるか?が最大の関心事です。実際、企業で働くアメリカ国内の従業員たちはこのトーナメントに夢中になるために、昨年の同大会期間中は米国内企業の損出額が19億ドル(約2280億円)に昇るという試算を米全国紙「USA Today」が報じました。さらには、アメリカ国内ではこの「マーチマッドネス」にスポーツベッティングが盛んに行われ、その賭け金の総額は90億ドル(約1兆1000億円)に昇るとの見方もあるほど人々は熱狂するのです。
では、今年のNCAAカレッジバスケットボールトーナメントを制するのはどのチームでしょうか?イギリスの老舗ブックメーカー「William Hill(ウィリアムヒル)」が優勝オッズを発表しましたので見てみましょう。
【NCAAカレッジバスケットボールトーナメント2016優勝オッズ】
※オッズは14日午後5時現在
優勝候補の筆頭にはミシガン州立大とノースキャロライナ大、そしてカンザス大の3チームが6.50倍のオッズで並んで挙げられています。そのあとを追うのがケンタッキー大で13.00倍、3番手にはヴァージニア大で17.00倍、4番手にはオレゴン大とオクラホマ大、そしてヴィラノバ大が19.00倍で並ぶ格好となっています。昨年の王者・デューク大は26.00倍、ファイナリストのウィスコンシン大は67.00倍のオッズが付いています。アンダードックはサウスダコタ州立大など15チームで1001.00倍のオッズとなっています。
では、サウス、ウェスト、イースト、そしてミドルウェストの各地区を勝ち上がり、4月決戦であるファイナルフォー(準決勝)へ進出してくるのはどのチームなのでしょうか?各地区の優勝オッズをブックメーカー「Paddy Power」が発表していますので、地区ごとに展望とともに見ていきたいと思います。なお、Paddy Powerホームページでオッズを確認する場合は、トップページで「Basketball」を選択し、「US Basketball」から「NCAA Basketball」をクリックするとご覧いただけます。
サウス地区(トップシード:カンザス大)
【NCAAカレッジバスケットボールトーナメントサウス地区優勝オッズ】
※オッズは14日午後5時現在
優勝候補の筆頭には第1シードのカンザス大が挙げられており、2.40倍のオッズが付いています。2番手には第2シードのヴィラノバ大で5.50倍、3番手には第7シードのアイオワ大で7.00倍と続きます。4番手には第5シードのメリーランド大で10.00倍、5番手には第3シードのマイアミ大(フロリダ)で11.00倍となっています。
APトップ25ランキング(最新:3月7日発表)で63人が1位投票を行っている1位のカンザス大(30勝5敗)が頭一つ抜けています。現地12日に行われたBig-12のカンファレンスチャンピオンシップでウェストヴァージニア大を81-71で破り、12年連続となるBig 12チャンピオンとなりました。2003年にヘッドコーチに就任したビル・セリフは2008年にチーム3度目となる全米No.1に導くなど、カンザス大の黄金期を支える名将です。フランク・メイソンとデヴォンテ・グラハムの最強ガードコンビに、ラストシーズンを戦うフォワードのペリー・エリスなどタレントも豊富で優勝候補の筆頭であるのには間違いなさそうです。
対抗馬としてヴィラノバ大(29勝5敗)とアイオワ大(21勝10敗)が挙げられます。ヴィラノバ大はAPトップ25ランキングで3位に入るなどカンザス大を脅かすほどの十分な力を持っています。29勝5敗は立派な成績です。昨年のトーナメントではトップシードながら3回戦で敗れるという屈辱を味わったチームのリベンジに期待です。アイオワ大はBig-10で開幕戦から7連勝と好スタートを切り、一時は優勝候補に名前が挙がるほどでしたが後半失速して、Big-10トーナメントでも敗れました。順当にいけばカンザス大とヴィラノバ大のエリートエイト決戦になるのでしょうか。
ウェスト地区(トップシード:オレゴン大)
【NCAAカレッジバスケットボールトーナメントウェスト地区優勝オッズ】
※オッズは14日午後5時現在
優勝最有力には第1シードのオレゴン大が3.50倍で挙げられていますが、すぐ後ろには4.00倍のオッズで第2シードのオクラホマ大が付けています。3番手には前回王者で第4シードのデューク大と第3シードのテキサス農工大で6.00倍のオッズ、第5シードのベイラー大と第6シードのテキサス大が8.00倍となっているなど混戦が予想されます。
オレゴン大(28勝6敗)は12日のPac-12トーナメント決勝で、ユタ大に88-57で勝利して第1シードを獲得しました。この試合で15点を奪うなど今シーズンのオレゴン大の躍進をけん引したのがフォワードのクリス・ブーシェでしょう。ブーシェは最初の2年間をジュニアカレッジで過ごして、ラストイヤーの今シーズンにその才能が開花した選手です。208センチの長身フォワードがラストイヤーで全米No.1の座をオレゴン大にもたらすことができるのでしょうか。
でもすんなり勝たせてはもらえないのが今回のウェスト地区です。第2シードのオクラホマ大(25勝7敗)はBig-12トーナメント準決勝でウェストヴァージニア大に67-69の僅差で敗れはしたものの、オレゴン大に引けを取らない力を持っています。ガードのバディー・ヒールドが1試合平均25点を奪う力を見せています。また、前回王者のデューク大(23勝10敗)も、ACCのトーナメント準々決勝でノートルダム大に79-84で敗れて5位に終わりましたが、連覇への期待感はありますね。
イースト地区(トップシード:ノースキャロライナ大)
【NCAAカレッジバスケットボールトーナメントイースト地区優勝オッズ】
※オッズは14日午後5時現在
優勝候補の筆頭は第1シードを獲得したノースキャロライナ大で3.00倍のオッズが付いています。2番手には第4シードのケンタッキー大で5.00倍、3番手には第2シードのゼイヴィア大で6.50倍となっています。そのあとを第3シードのウェストヴァージニア大が9.00倍、第5シードのインディアナ大が10.00倍のオッズで追う展開となっています。
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ノースキャロライナ大(28勝6敗)は、ACCトーナメント決勝ではヴァージニア大に61-57で勝利して18回目のカンファレンスチャンピオンとなり、トップシードの座を獲得しました。ロイ・ウィリアムズHCの下で奪った2009年以来6回目のナショナルチャンピオンを狙います。チームの中心は1年生からレギュラーを張るポイントガードのマーカス・ペイジです。今シーズンはその他のシーズンに比べて成績的には物足りなさも感じますが、彼の存在がチームの躍進の原動力であることは間違いありません。ラストイヤーを迎えたペイジのマーチマッドネスを期待したいものです。
昨シーズン34勝無敗でNCAAカレッジバスケットボールトーナメントに突入したケンタッキー大(26勝8敗)は、今年のSECトーナメントも勝ち上がり、決勝ではテキサス農工大にオーバータイムの接戦の末82-77で勝利し、SECチャンピオンとしてマーチマッドネスに挑みます。第2シードでAPトップ25では5位のゼイヴィア大(27勝5敗)は、Big Eastのトーナメント準決勝でセトンホール大に83-87と敗れてはいるものの怖い存在です。
ミドルウェスト地区(トップシード:ヴァージニア大)
【NCAAカレッジバスケットボールトーナメントミドルウェスト地区優勝オッズ】
※オッズは14日午後5時現在
ベスト4入りへ最も近いのが第1シードのヴァージニア大で3.00倍のオッズが付いています。僅差でトップシード落ちをした第2シードのミシガン州立大が3.50倍で追いかけます。優勝候補の3番手には第3シードのユタ大で7.00倍、そのあとに第5シードのパーデュー大と第4シードのアイオワ州立大が9.00倍で並んでいます。
「ヴァージニア大対ミシガン州立大」の決戦になるとの見方が強いようです。ヴァージニア大(26勝7敗)はACCトーナメント決勝でノースキャロライナ大に敗れていますが、ミドルウェスト地区のトップシードの座を射止めています。チームの主力であるマルコム・ブロードンは、キャリアハイとなる1試合平均18.7点を奪い、フィールドゴールの成功率も.468と過去最高を記録するなどヴァージニア大の攻撃力の中心を担っています。ラストイヤーのブロードンがヴァージニア大初の全米チャンピオンに導けるかどうかに期待が集まります。
対するミシガン州立大(29勝5敗)はBig-10のトーナメント決勝ではパーデュー大を66-62で破りタイトルを獲得し、トップシード入りとの見方もありましたが第2シードに甘んじる結果となりました。是が非でもトップシードであるヴァージニア大に雪辱を果たしたいところでしょう。チームの得点源であり司令塔のダンゼル・バレンタインは1試合平均19.6点、7.5アシストと2つの部門でチームトップの成績を残す活躍をみせており、2000年以来3度目となる全米王者への返り咲きを果たしたいところでしょう。
優勝有力チームを中心に見ていきましたが、やはりマーチマッドネスはアップセットが起こりやすく非常に予想が難しいことでも有名です。そんな中でこそどのチームを優勝予想のトップにするのか?を楽しみたいものです。
なお、NCAAカレッジバスケットボールトーナメントのファーストフォーからファイナルまで全試合ブックメーカーでオッズが発表されます。