色鮮やかなジャージに身を包んだライダーたち。イタリアの険しい山脈を駆け上る自転車。3週間かけて目指すはるか彼方のゴール。世界屈指の過酷な自転車ロードレースの祭典、ジロ・デ・イタリア2017の開幕まであとわずかとなりました。記念すべき第100回目となる2017年大会は、5月5日にスタートし、3,572.2kmを駆け抜け、5月28日にグランド・フィナーレを迎えます。
ジロ・デ・イタリア概要
ジロ・デ・イタリア(以下ジロ)はイタリア全土を巡る自転車レースで、例年5月に開催されます。フランスの「ツール・ド・フランス」、スペインの「ブエルタ・ア・エスパーニャ」と並んで、ヨーロッパ最大の自転車レース「グランツール」の一つに数えられています。ジロを大きく特徴づけるのは険しい山岳ステージの数々。歴代の優勝者には世代を代表するクライマーたちが多くその名を連ねています。
昨年の結果
2016年のジロは波乱含みの展開となりました。第19ステージ(ピネローロ-リスル、山岳ステージ)、初のグランツール制覇に向けて総合1位で独走していたステフェン・クライスバイク(オランダ)がまさかの落車で、上位陣は混戦に。最後はそこから抜け出したヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア)が86時間32分49秒でゴールし、2013年以来2度目となるマリア・ローザ(総合1位に授与されるピンク色のジャージ)を獲得するという結末に終わりました。
2位にはエステバン・チャベス(コロンビア)、3位にはアレハンンドロ・バルベルデ(スペイン)が入賞しています。
各賞は、ポイント賞(マリア・ロッソ・パッショーネ)はジャコモ・ニッツォーロ(イタリア)、山岳賞(マリア・アッズーラ)はミケル・ニエベ(スペイン)、新人賞(マリア・ビアンカ)はボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク)が獲得しています。
日本人選手では、NIPPO・ヴィーニファンティーニに所属する山本元喜がグランツール初出場を飾り、総合151位で日本人史上5人目のジロ完走を果たしました。まだ25歳と若く、これからますますの活躍に期待がかかる選手です。
開催コース
【ジロ・デ・イタリア2017コース】
今年のジロのスタート地は、地中海に浮かぶ島サルデーニャ。ここからゴールのミラノまで長い旅が始まります。
まず、最初の3ステージは島の北部から南部へ向かうコースです。そこから南に位置するシチリア島に渡り、東へ2ステージ。ヨーロッパ最大の活火山であるエトナ山を上る過酷な山岳ルートを進みます。
海峡を渡ってイタリア本土へ渡ると、第6ステージが始まります。ここからはイタリア半島を北上していきます。北西部に到達したら、そこから北東に向けてアルプス山脈を横断。ここでは一時スイスも通過します。
最終日はF1が開催されることで有名なモンツァ・サーキットからミラノ市街地に渡る28km個人タイムトライアル。そして長大な旅の締めくくりを迎えることとなります。
優勝オッズ
【ジロ・デ・イタリア2017優勝オッズ】
※1日午前8時現在
体も心も強くなくては勝ち残れない極限のレースであるジロ。その頂点に達する選ばれし選手は誰なのでしょうか。ブックメーカー「10Bet」が今大会のジロ・デ・イタリア2017の優勝オッズを発表していますので、ご紹介していきます。
優勝候補最有力には2014年のジロ優勝者であるナイロ・キンタナがオッズ1.90倍で挙げられました。続く2番手には昨年度王者のヴィンチェンツォ・ニバリで6.75倍、3番手には昨年落車により優勝を逃すも総合4位に入ったステフェン・クライスバイクが7.75倍のオッズで続いています。
上位3選手に食らいつくトム・デュムラン(12.00倍)やゲラント・トーマス(12.50倍)にも期待したいところです。
優勝候補
ナイロ・キンタナ(モビスター・チーム)
ロードレースの最先端を走り続ける名門モビスター・チームのエースであるキンタナ。彼にとって2016年は、グランツールの一つブエルタ・ア・エスパーニャを制覇、そして同じくグランツールのツール・ド・フランスで3位と見事な成績を残し、時代を代表するレーサーの一人であることを証明する1年となりました。
2017年、キンタナはジロとツール・ド・フランスへの出場を表明しました。目標は1998年にマルコ・パンターニ(イタリア)が達成して以来となる、両グランツールの同年優勝だと明言しています。地元コロンビアの高地で培った高い心肺機能に裏付けされた山岳での力強い走りはジロのコースにうってつけ。イタリアの地で、再びのピンクに向けてキンタナの飛翔が始まります。
ヴィンチェンツォ・ニバリ(バーレーン・メリダ)
2010年にブエルタ・ア・エスパーニャ、2014年にツール・ド・フランス、2013年と2016年にジロと、毎年のようにグランツールを制しているニバリが優勝候補に名前を挙げられることはもはや当然のことでしょう。
連覇を期する今年のジロには、新チーム「バーレーン・メリダ」で臨みます。バーレーン・メリダは中東のバーレーン王国が今年創設した新しいロードレースチームです。所属選手には日本のロードレース第一人者である、新城幸也もいます。バーレーン王家の豊かなサポートの元、ロードレースの世界に殴り込みをかけるチームの絶対エースとしての役割をニバリは担うことになりました。
イタリア人のニバリとしては、記念すべき100回大会、しかもコースには生まれ故郷メッシーナ(シチリア島、第5ステージゴール地点)も含まれるとあって、さぞかし気合の入っていることでしょう。ニバリはシチリア島で英雄的人気を誇っており、シチリア島を走る第4、5ステージでは特に大きなアドバンテージを得ることになりそうです。前大会王者として、イタリア人として、シチリア人として、ニバリは決して負けられません。
ステフェン・クライスバイク(チーム・ロットNL・ユンボ)
昨年は事故で惜しくもジロ優勝を逃したクライスバイク。オフシーズンにはすでに今年のジロ参戦を明言したことを考えると、雪辱に燃えていることは明白です。
過去にグランツール優勝歴はなく、昨年のジロ4位が最高記録。キンタナやニバリと比べてその経歴は一段劣るものですが、それだけに頂点を掴むチャンスをなんとしても逃すわけにはいきません。
29歳とアスリートとしての円熟期を迎えつつある年齢で臨む今年のジロを制し、クライスバイクは歴史に名を刻むレーサーの仲間入りをすることができるでしょうか。ぜひとも注目したいところです。