波乱の幕開けとなった3歳クラシックから息つく間もなく、伝統のG1レース、天皇賞春(G1、3200㍍・芝)が京都競馬場で開催されます。
3200mという、年に一度しか行われない特殊な距離であることから波乱含みの結果も多いこのレース。
昨年制したのは2番人気のキタサンブラックでしたが、ゴール前は伏兵13番人気のカレンミロティックとの壮絶なたたき合いにより何とか手にした勝利でした。
【天皇賞春2016(勝ち馬:キタサンブラック)】
今年の天皇賞春における焦点はやはり、今の日本を代表するあの『両雄』でしょう。今回はそんなカギを握る2頭を中心に有力馬をご紹介していきます。
【天皇賞春2017枠順】※27日午後5時更新
1-1 シャケトラ(牡4、田辺裕信・角居勝彦)
1-2 ラブラドライト(セ8、酒井学・斉藤崇史)
2-3 キタサンブラック(牡5、武豊・清水久詞)
2-4 スピリッツミノル(牡5、幸英明・本田優)
3-5 ファタモルガーナ(セ9、浜中俊・荒川義之)
3-6 シュヴァルグラン(牡5、福永祐一・友道康夫)
4-7 アルバート(牡6、川田将雅・堀宣行)
4-8 タマモベストプレイ(牡7、吉田隼人・南井克巳)
5-9 ディーマジェスティ(牡4、蛯名正義・二ノ宮敬宇)
5-10 アドマイヤデウス(牡6、岩田康誠・梅田智之)
6-11 プロレタリアト(牝6、杉原誠人・小島茂之)
6-12 ゴールドアクター(牡6、横山典弘・中川公成)
7-13 トーセンバジル(牡5、四位洋文・藤原英昭)
7-14 ワンアンドオンリー(牡6、和田竜二・橋口慎介)
8-15 サトノダイヤモンド(牡4、C.ルメール・池江泰寿)
8-16 レインボーライン(牡4、M.デムーロ・浅見秀一)
8-17 ヤマカツライデン(牡5、松山弘平・池添兼雄)
まずは、ブックメーカー「bet365」が発表しているオッズをご確認いただきましょう。
昨年の覇者、そして今年の大阪杯(G1、2000㍍・芝)を制したキタサンブラックですが、ブックメーカーのジャッジでは2.40倍とサトノダイヤモンドよりも僅かではありますが低い評価となっています。
年が明けて「衰え」という言葉が付きまとう中、大阪杯でみせたパフォーマンスは馬主であるサブちゃんこと北島三郎氏に「引退撤回」を言わしめるほどでした。
大阪杯とそう変わらない顔ぶれならば、キタサンブラック陣営にとって脅威となる馬は居なかったかもしれません。ですが今回は、昨年末キタサンブラックを負かした最大のライバルが出走します。
ご存知、サトノダイヤモンドです。今回「bet365」の評価上ではキタサンブラックよりも僅か0.15倍ではありますが高い評価の2.25倍となっています。
クラシック最後の一冠菊花賞を制し、迎えた古馬との初対決。昨年有馬記念においては、クビ差ながらも完勝といえる内容。「キタサンブラック一強時代」となりつつあった古馬路線に大きく切り込む形となりました。
実力は甲乙付けることが難しく、両陣営ともに天皇賞春を最大の目標と考えている為、状態面も納得のいくレベルに持ってくると考えると、次に見るべきはこの両頭に跨る『騎手』ではないでしょうか。
キタサンブラックの鞍上は、日本が誇る名手武豊騎手。
競馬ファンなら説明不要のスーパースターではありますが、けがの影響や社台グループとの確執、さらに近年は外国人騎手の台頭や、騎手エージェント制によって全盛期ほど質の良い馬を集めることが出来ている訳ではない状況が続いています。
そんな中でもやはりキタサンブラックのようなアイドルホースであり実力馬を引き寄せ、モノに出来るのは、武豊騎手しかいないでしょう。
武豊騎手自身も「乗るたびに進化を感じさせてくれる馬というのは、なかなかいるものではない」と絶賛。「昨年がキタサンブラックの完成形かなと思っていたが、精神的にも肉体的にも、今年はさらに強くなっている」と、相棒の充実っぷりに手ごたえを感じています。
そして今現在が充実しているのはキタサンブラックだけでなく、武豊騎手自身にもいえること。
キタサンブラックとともに制した大阪杯から、桜花賞ではリスグラシュー(3番人気)で2着。皐月賞ではダンビュライト(12番人気)で3着と、まさに絶好調です。
一方、サトノダイヤモンドの鞍上といえばデビューから代わることなく騎乗し続けるクリストフ・ルメール騎手。
現在騎手総合リーディング2位。今やM.デムーロ騎手と並ぶ人気騎手となりましたが、そんなデムーロ騎手と比べられてしまうこともあいまって「ルメールはあまり勝負強くない」という気持ちを抱いている競馬ファンも散見されます。
確かに、直近では、桜花賞において単勝1.4倍の一番人気であったソウルスターリングで3着。3月末のドバイミーティングではUAEダービー(海外G2、1900㍍・ダート)においてハナ差で勝利を逃すなど、そういったイメージが先行してしまう結果も少なくありません。
ただ、馬質の差や騎乗数の差はありますが、実際のところ武豊騎手とC.ルメール騎手の『G1における単勝回収率』を比べてみると、武豊騎手が32%、C.ルメール騎手が39%と、若干ルメール騎手のほうが上回っているということも事実。
逆に言えば、200%をゆうに超えているM.デムーロ騎手が異次元すぎるということです。
そしてもうひとつ、この2頭にとって「有馬記念にあって天皇賞春にないもの」があります。
それが『斤量差』です。
2016年の有馬記念当時、キタサンブラックは4歳の為『57キロ』を背負うことに。一方でサトノダイヤモンドは3歳馬でしたので『55キロ』でした。
単純な話ではありますが、競馬において「斤量が1キロ違えば半馬身~1馬身変わる」と言われています。
つまり、斤量に重きを置いた話をすれば「有馬記念のクビ差」は、決してキタサンブラック陣営にとって完全なる敗北だったとは言い難いものでもあります。ましてや今回は3200mとかなりの長丁場であり、余計に斤量は軽視できない要素です。
少なくとも菊花賞(G1、3000㍍・芝)、阪神大賞典(G2、3000㍍・芝)におけるサトノダイヤモンドのパフォーマンスを見る限り『57キロ』という斤量自体に一切不安は残りません。あとは、キタサンブラックを相手取った際にどうかという点だけでしょう。
昨年1番人気ながらに12着に敗れ、今年はブックメーカーでも17.00倍とかなり低評価になってしまっているゴールドアクターも、手綱を握り続けてきた吉田隼人騎手を敢えておろし、今回は横山典弘騎手を鞍上に迎えます。
時折見せる大胆な騎乗が持ち味の横山騎手。これまでのゴールドアクターの競馬では正直な話底が見え始めてしまっているだけに、極端な”奇策”に打って出る可能性も十二分にあります。
サトノダイヤモンドと並んで楽しみな4歳馬が、わずかキャリア6戦で今回の舞台に挑む急成長株がシャケトラ(10.00倍)。
父は天皇賞春を制したマンハッタンカフェ。母父にはジャパンカップ制覇をはじめとし、中長距離で活躍したシングスピールを持つなど、血統背景的にはロングディスタンスは十二分にこなせる範囲、むしろ天皇賞春は不安以上に楽しみが多いことでしょう。
日本トップステイヤーの地位を確立しつつあるアルバート(26.00倍)の名前も忘れてはいけない存在でしょう。
ステイヤーズステークス(G2、3600㍍・芝)、ダイヤモンドステークス(G2、3400㍍・芝)など、日本の主要なステイヤー重賞を総なめ、圧勝している実力は見過ごせません。
その他にも、菊花賞においてサトノダイヤモンドにつぐ2着入線を果たしたレインボーライデン(17.00倍)や、昨年の天皇賞春3着のシュヴァルグラン(11.00倍)などが出走予定です。
伝統ある一戦を制するのはどの馬か?発走予定時刻は4月30日15時40分となっています。