世界を代表する大都市の一つであるロンドン。金融や経済の中心地の一つであるとともに、古代ローマの時代にロンディウムと呼ばれたころから長く続く歴史深い土地でもあるロンドンを、人々が走り抜ける一大スポーツイベントが「ロンドンマラソン」です。世界中の市民ランナーが憧れ、世界トップクラスのランナーも多く参加するこの大会は4月23日(日)号砲です。
ロンドンマラソン概要
世界最大のマラソン大会の一つであるロンドンマラソン。男子の部、女子の部に加えて車いすの部もあり、参加者は毎年4万人を超えるほどの大変人気の高い大会です。過去には1986年大会の瀬古利彦、1987年の谷口浩美と男子日本人が連覇したこともあります。
昨年には国際宇宙ステーションに滞在中のイギリス人宇宙飛行士ティム・ピークが、ステーションに備え付けられているランニング装置を使い、タブレットで映し出されるロンドンの街並みを見ながら、リアルタイムでロンドンマラソンに参加したことでも話題を呼びました。
今年の8月にはロンドンで世界陸上2017が開催されます。季節は違えども同じロンドンの街を前もって走ることができるというのは大きなアドバンテージになるでしょう。今年は例年よりもレベルの高い戦いになるかもしれません。
昨年の結果(男子)
2016年大会では、ケニアのエリウド・キプチョゲが世界歴代2位となる2時間3分5秒の大会記録で優勝を果たしました。2015年大会でもキプチョゲは2時間4分42秒で優勝しており、これで2連覇となりました。
2位は同じくケニアのスタンリー・ビウォットが2時間3分51秒、3位には北京オリンピックで2つの金メダルを獲得した一万メートル世界記録保持者のケネニサ・べケレ(エチオピア)が入りました。世界記録保持者(2時間2分57秒)のデニス・キメット(ケニア)は2時間11分44秒で9位に終わっています。
日本人では佐藤悠基(日清食品グループ)が2時間12分14秒の自己ベストで11位となりました。
昨年の結果(女子)
女子はリオデジャネイロオリンピック女子マラソン金メダリストのジェミマ・スムゴング(ケニア)が2時間22分58秒で優勝を飾りました。キプチョゲと合わせ、4月に行われた今大会の王者が男女ともに8月開催のリオ五輪マラソンを制覇したことになります。2位にはエチオピアのティジスト・ツファ、3位はケニアのフロレンス・キプラガトが入りました。
優勝オッズ(男子)
【ロンドンマラソン2017男子優勝オッズ】
※オッズは20日午前8時現在
ブックメーカー「NetBet」の発表する2017年ロンドンマラソン男子優勝オッズによると、昨年度大会では3位だったケネニサ・べケレが2.05倍で優勝候補筆頭に挙げられました。続く対抗馬となる2番手には、昨年度2位のスタンリー・ビウォットが3.40倍で挙げられています。3番手はエチオピアのテスファイ・アベラで6.50倍、4番手は同じくエチオピアのフェイサ・リレサが7.50倍となりました。
昨年度王者で、リオデジャネイロオリンピック男子マラソンでも金メダルを獲得している「マラソン2時間切りに最も近い男」エリウド・キプチョゲは、2時間切りを目指すナイキのプロジェクトの関係で今大会は不参加となっています。
優勝オッズ(女子)
【ロンドンマラソン2017女子優勝オッズ】
※オッズは20日午前8時現在
ブックメーカー「bet365」の発表するオッズによると、優勝最右翼は昨年2時間24分26秒でニューヨークシティ・マラソン3連覇を果たしたメアリー・ケイタニー(ケニア)が3.25倍で挙げられました。続く2番手は5000メートルの世界記録保持者のティルネシュ・ディババ(エチオピア)で4.00倍、3番手にはリオ五輪の5000メートルの金メダルと10000メートルの銀メダルを獲得したビビアン・チェルイヨット(ケニア)が5.50倍となっています。
昨年優勝者のジェミマ・スムゴングは、抜き打ち検査で持久力向上効果のあるエリスロポエチンに陽性反応を示したことで資格停止処分を受ける見込みであることから、今回のロンドンマラソンでは欠場が決まっています。
優勝候補(男子)
ケネニサ・べケレ
招待選手として参加するエチオピアのケネニサ・べケレ。昨年のロンドンマラソンでは3位入賞しています。昨年9月のベルリンマラソンでは世界歴代2位、世界記録までわずか6秒となる2時間3分3秒で優勝を飾っており、今大会も間違いなく優勝候補の一人とみて間違いないでしょう。
現在34歳のべケレはマラソンに参戦したのは2014年と遅い時期ですが、初参加となったパリマラソンでは2時間5分4秒の大会記録をたたき出し優勝しました。それ以前はトラック長距離を専門としており、5000メートル、10000メートル、および室内2000メートルの世界記録を保持しています。オリンピックの金メダルは3つ、世界陸上では5つとまさに栄光に包まれた競技人生を送っているべケレ。ロンドンの世界陸上でマラソンの金メダルを獲得するためにも、今回のロンドンマラソンに対する意気込みは非常に高いはずです。
スタンリー・ビウォット
昨年のロンドンマラソンでは自己ベストで2位に入ったビウォット。2012年のパリマラソンや2015年のニューヨークマラソンでは優勝を成し遂げており、コンスタントに高い結果を出し続けていると言えます。
ロンドンマラソンでは2013年は首位から約2分30秒差で8位、2014年約25秒差で2位、2015年約2分差で4位、2016年は約45秒差で2位と、あと少しのところで優勝に手が届いていません。
もうすぐ31歳と年齢的にも若く、マラソン選手としてはピークの年齢にあるビウォット。念願のロンドンマラソン制覇に向けて、準備に余念がないことでしょう。
優勝候補(女子)
メアリー・ケイタニー
2011年、2012年にはロンドンマラソンで連覇を果たしているケイタニー。昨年は9位という結果に終わりましたが、その後のニューヨークシティ・マラソンでは優勝しており、その能力の高さを示しています。
2012年にロンドンマラソンを制した時のタイム2時間18分37秒はポーラ・ラドクリフの世界記録である2時間15分25秒に次ぐマラソン歴代2位の記録。相性のいいロンドンでさらなる記録の樹立にも期待できるはずです。
ティルネシュ・ディババ
2008年北京五輪、2012年ロンドン五輪に続く10000メートル3連覇をかけて臨んだ昨年のリオ五輪では銅メダルを獲得したディババ。とはいえ、出産のためにブランクがあった後のメダルとあって、その能力に疑いはありません。
マラソンでも2時間20分35秒という素晴らしい自己ベスト記録を持っています。これは2014年にロンドンで出したもの、昨年のロンドンマラソン優勝タイムを超える水準です。このことから見ても、今大会ディババの優勝の可能性は大いにあると見てよいでしょう。
マレ・ディババ
高倍率のオッズを狙うならマレ・ディババがオススメです。2015年世界陸上北京大会の女子マラソン金メダリストにして、2016年リオ五輪女子マラソン銅メダリストです。まだ27歳と若く、2020年の東京オリンピックでも金メダルが期待されています。もちろん8月の世界陸上ロンドン大会でも活躍が見込まれており、日本人選手の最大のライバルとして名前を挙げるメディアもあるほど。
しかし、ブックメーカーでは6番手の10.00倍のオッズが付けられており、前評判と大きなかい離があるようです。ひょっとしたらこれは大きな当りを引き当てるチャンスかもしれません。
ロンドン南東部に位置する、いわゆるグリニッジ平均時の基準となる街として有名な「グリニッジ」をスタートし、市内を巡った後、英国王室の住居である「バッキンガム宮殿」と、1805年のトラファルガーの海戦勝利を記念した「トラファルガー広場」を結ぶ儀礼用の道路である「ザ・マル」でゴールとなるロンドンマラソン。
ロンドンの観光名所が目白押しのこのマラソンですが、3月に起きたテロの影響もあり、厳戒態勢の中で行われることになるでしょう。ロンドン世界陸上に向けた予行練習としても、テロに屈さない英国をアピールするためにも非常に重要な大会となることが予想されます。
この大会は8月に控える世界陸上ロンドン大会における、日本代表のライバルたちをチェックするいい機会にもなるでしょう。昨年の優勝者が男女ともに欠場しているのは残念なことですが、それでも、マラソンのみならず長中距離でもメダル争いに大いに関わってくるであろう選手たちが多く参加しています。
世界陸上まであと数か月。その予習として、同じロンドンで行われるこの大会でブックメーカーを通して確認してみてはいかがでしょうか。