全米を熱狂の渦に巻き込むNCAAバスケットボール。レギュラーシーズンを勝ち抜いた大学によるトーナメント戦はマーチ・マッドネスとも呼ばれ、アメリカのドラマなどで登場人物がその優勝校を予想したり、情熱的に応援したりするシーンがたびたび見られます。
アマチュアスポーツの枠を超えたこの一大イベントはレギュラーシーズンが11月10日に始まり、2018年3月4日に終了。“マーチ・マッドネス”と呼ばれるトーナメントが3月13日に始まり、4月2日に決着を迎えます。ブックメーカー「bet365」の発表する優勝オッズを参考に、この世界最高峰の学生スポーツの展望をご紹介していきます。
プロスポーツを越えたアマチュアスポーツ
NCAAとは全米大学体育協会(National Collegiate Athletic Association)を略した名称で、アメリカの大学スポーツを統括する組織です。アマチュアとは言いますが、合計で約80億ドル(約8000億円)もの売り上げをあげており、その規模は想像をはるかに超えるもの。MLB(約7000億円)やNBA(約4700億円)さえも上回る世界最大級のスポーツ組織の一つといえるでしょう。
参加大学一つをとってもその経済規模は巨大なもので、2014-15年の収入ランキング1位に輝いたテキサスA&M大の収益はなんと1億9260万ドル(約192億6000万円)。日本のスポーツクラブと比較すると、Jリーグで2016年度売上トップの浦和レッズで66億600万円と実に半分以下。その収益力の圧倒的な高さがよく理解できます。
そんなNCAAの中でも、人気が高いのがバスケットボール。アメリカンフットボールと並び、NCAAの収益を大きくけん引しています。大学バスケからNBAに巣立っていくスタープレーヤーも数多くおり、全米に1億2600万人ほどいるといわれている男子バスケファンたちの心を毎年燃え上がらせています。
昨シーズンはノースカロライナ大が前年の悪夢を乗り越え優勝
トーナメントを勝ち抜き、ファイナルフォーと呼ばれる準決勝まで到達したのは東地区7位のサウスカロライナ大学ゲームコックス、西地区1位のゴンザガ大学ブルドッグス、中西部地区3位のオレゴン大学ダックス、南地区1位のノースカロライナ大ターフィールズの4校となりました。
準決勝はともに激戦となりましたが、ゴンザガ大とノースカロライナ大が決勝戦に進出。ノースカロライナ大は2年連続での決勝進出となっています。前年にはビラノバ大学ワイルドキャッツにブザービーターで敗北するという悲劇を味わいましたが、2017年はゴンザガ大の猛攻をしのぎ切り、見事史上6回目の王者の座を掴み取りました。
デューク大に最高オッズがつけられる
【NCAA男子バスケットボール2017-2018優勝オッズ(上位)】
※オッズは5日午後5時現在
<NCAA男子バスケットボール2017-2018最新オッズ情報(bet365発表)>
ブックメーカー「bet365」の発表する優勝候補筆頭はデューク大。オッズは6.00倍となりました。昨シーズン第2ラウンドでサウスカロライナ大に敗北した雪辱を果たしたいところでしょう。
2番手はミシガン州立大でオッズは8.50倍となりました。3番手はケンタッキー大とアリゾナ大で10.00倍、5番手カンザス大が15.00倍、ノースカロライナ大が16.00倍と続いています。
記者とコーチの最高評価も名門デューク大に
NCAA男子バスケットボールの優勝予想を立てる際に大きく参考になるものが2つあります。それが大手通信社AP通信の発表する「APトップ25投票」と全国紙USAトゥデイの発表する「USAトゥデイコーチ投票」です。前者はNCAA男子バスケの取材を行う記者、後者は現場を指揮するコーチの投票で大学のランキングが付けられています。
2017-18年度のシーズン前投票においてトップに立ったのはデューク大学ブルーデビルズ。昨シーズンもシーズン前の両投票で1位に挙げられており、その高い実力が常に評価されていることがうかがえる結果となりました。
注目したいのは新人のマーヴィン・バグリー3世。18歳ながら211センチ102キロと堂々たる体格を誇り、高校生トップのプレーヤーの評価を集めていた選手です。超新星がデューク大を2015年以来の頂点に押し上げることになるかもしれません。
全米屈指の名将とともに歩むミシガン州立大
AP通信でもUSAトゥデイでも、デューク大に次ぐ2番手の評価を受けているのがミシガン州立大です。優勝オッズも2番手と、ミシガン州立大がデューク大の対抗馬筆頭であることに間違いないでしょう。
ミシガン州立大といえば、やはり名将トム・イゾーの存在は大きなものです。1983年にミシガン州立大のアシスタントコーチになり、短期間ほかの大学でコーチ経験を積みましたが、すぐに戻ってくると1995年にヘッドコーチに就任。以来22年間ミシガン州立大を指揮し、2000年には大学史上2回目のトーナメント優勝も果たしました。
2010年にはレブロン・ジェームズ擁するクリーブランド・キャバリアーズからヘッドコーチ就任のオファーを受けるも、ミシガン州立大への愛を貫いて留任を決めたほど、その生涯をミシガン州立大に捧げています。ミシガン州立大はそんな名将を再び王座に就かせることができるでしょうか。
ゴンザガ大の鍵を握るのは日本人か?
昨シーズン準優勝を果たしたゴンザガ大。ブックメーカーのオッズでは17番手の46.00倍とあまり高い評価はつけられておらず、優勝に絡んでいけるかは不透明ですが、この大学は日本で大きな注目を集めています。その理由が2年生の八村塁。昨年日本人として初めてNCAAトーナメントでプレーした19歳の新鋭です。
203センチの日本人離れした体格で2015年には高校生として唯一日本代表に呼ばれるなど、期待を集めてきた八村は昨シーズン準々決勝で3ポイントを決めるなど、将来の主軸足り得る素質を発揮しました。NCAAの公式サイトでも今シーズンの注目選手として名前が挙がるなど、スター候補生としての道を駆け上がりつつあります。ゴンザガ大を優勝に導く活躍ができれば、NBAへの道も開かれることでしょう。日本史上最高級の逸材はNCAAの高い壁を乗り越えることができるでしょうか。