フェブラリーステークスを皮切りに始まった日本競馬春のG1戦線も残すところ上半期古馬路線の総決算である宝塚記念(G1、2200㍍・芝)を残すのみとなりました。
昨年の宝塚記念は2015年日本ダービー馬にして2冠を達成したドゥラメンテが単勝オッズ1.9倍と圧倒的支持を得た中、8番人気と伏兵評価に留まっていた牝馬マリアライトが鮮やかにクビ差退けて見事に勝利をモノにしました。
【宝塚記念2016(勝ち馬:マリアライト)】
昨年16頭立てとなったのに比べ、今年は有力候補の1頭であるサトノダイヤモンド陣営が当初の予定通りフランスの凱旋門賞(海外G1、2400㍍・芝)への出走に向けて、宝塚記念を回避。
【宝塚記念2017枠順】※22日午後3時更新
1-1 ミッキーロケット(牡4、和田竜二・音無秀孝)
2-2 ゴールドアクター(牡6、横山典弘・中川公成)
3-3 スピリッツミノル(牡5、幸英明・本田優)
4-4 クラリティシチー(牡6、松山弘平・上原博之)
5-5 シュヴァルグラン(牡5、福永祐一・友道康夫)
6-6 シャケトラ(牡4、C.ルメール・角居勝彦)
6-7 レインボーライン(牡4、岩田康誠・浅見秀一)
7-8 ミッキークイーン(牝5、浜中俊・池江泰寿)
7-9 ヒットザターゲット(牡9、川田将雅・加藤敬二)
8-10 キタサンブラック(牡5、武豊・清水久詞)
8-11 サトノクラウン(牡5、M.デムーロ・堀宣行)
このことに加え、昨年のダービー馬マカヒキは秋まで休養。大阪杯(G1、2000㍍・芝)へ出走した中堅どころの古馬もこぞって今年は安田記念(G1、1600㍍・芝)に参戦するなどしたため、今年は特別登録の段階で僅か11頭のみと、少々寂しいグランプリレースとなりました。
と、なれば競馬ファンの、そしてブックメーカーの注目も一身に集めるのはやはりあの馬しかいないでしょう。まずはブックメーカー「bet365」から発表されているオッズをご確認ください。
最大のライバルであるサトノダイヤモンドが居ないとなればやはりこの馬を一番手評価に挙げない競馬ファンは今やほぼいないでしょう。
今年の大阪杯そして天皇賞春(G1、3200メートル・芝)を制した名実ともに古馬最強となったキタサンブラック(1.50倍)です。
ファン投票による得票率は83.0%。あの稀代のアイドルホース、オグリキャップの記録(82.0%)を越えることとなりました。
確実に積み上げてきたG1勝利数は5勝。これだけの勝ち星を重ねられたのには、同世代のライバルであったドゥラメンテやリアルスティールが不調やケガで離脱したこともあるとはいえ、デビュー時から大きなけがもなく走り続け、現4歳世代をもまんまと退けるその強さは圧巻の一言です。
陣営からも「去年とは馬が違う。かなりパワーアップしていますからね。調整もすこぶる順調です」と、自身に満ち溢れたコメント。
仮にキタサンブラックが宝塚記念を制すれば、史上初の春G1戦線3連勝にして春古馬3冠の達成となります。達成されれば特別報奨金として2億円が陣営には贈呈されるだけに、実利的な部分でも是非とも制覇したいところです。
では、そんなキタサンブラックに果たして死角はないのか?
実はひとつの不安材料がキタサンブラックにも存在します。
それが「その年の天皇賞春優勝馬は直近10年で7頭出走するも、宝塚記念を勝利していない」という点。
オカルトチックなデータにも思われますが、日本のG1レースにおいて最長距離である3200mという距離を勝利するために走り切った馬たちの疲労は想像以上のものがあるということでしょうか。
ましてや今年はレコードタイム決着。行き過ぎたスピード馬場、高速馬場は脚元への見えない疲労が蓄積される恐れがあるとされています。
非常にタフな馬であることに違いありませんが、キタサンブラックにしっかりと余力が残っているのか、昨年の宝塚記念で3着に敗れた理由の一因もここにある可能性は否定できないでしょう。
キタサンブラックから大きく離されて2番手評価となっているのがミッキークイーン(8.00倍)、そしてシャケトラ(7.50倍)の2頭です。
まずは、今回出走メンバー中唯一の牝馬となる2015年の牝馬2冠馬ミッキークイーン。
かなりムラのあるイメージが強いですが、実は関西の競馬場で開催されたレースで連対を外したのは2016年のエリザベス女王杯(G1、2200㍍・芝)のみ。このレースも3着と馬券圏内は確保していました。
良績が2000~2400mに固まっていることからも、阪神2200mという条件は歓迎すべきと言ってよいでしょう。
一方のシャケトラはG1初挑戦の天皇賞春で3番人気に推されながらも9着と初の大敗。陣営も「レース経験も浅く、体つきもキ甲が抜けず幼いまま。まだまだ成長途上ですがよく頑張ってくれています。相手は強いですが、精一杯の勝負をして欲しいですね」と、今回よりそれ以降を見通している状況といえるでしょう。
ですが、鞍上は今年春のG1戦線で絶好調だったC.ルメール騎手。
少々弱気なコメントに比べると、最初から勝負を諦めているようには決して見えない、不気味な陣営です。
キタサンブラックに最も雪辱を果たしたい馬はシュヴァルグラン(8.00倍)でしょう。阪神大賞典(G2、3000㍍・芝)ではサトノダイヤモンドに、そして天皇賞春ではキタサンブラックの前に敗れともに2着。好走こそすれど主役になり切れないのはもどかしいでしょう。
キタサンブラック陣営も凱旋門賞挑戦を表明している為、もしかするとシュヴァルグランにとってこれがリベンジのラストチャンスとなってしまうかもしれません。
総大将であるサトノダイヤモンドこそ出走は叶わなかったものの、サトノ軍団からは昨年香港で勝利したサトノクラウン(8.50倍)が出走予定。こちらは阪神コースにおいて良績がないというのがやや気がかりではあります。
その他にも復活を誓う2015年有馬記念優勝馬にして阪神コース初挑戦となるゴールドアクター(13.00倍)や、デビュー戦以来となる浜中騎手とのコンビを組むこととなったミッキーロケット(19.00倍)などが出走を予定しています。
大本命キタサンブラックの偉業達成か、それとも苦汁を味わい続けてきたライバルたちの反逆なるか。
週中に記録的大雨となる予報が発表され、週末の天気も不安定なだけにこういった部分もどんな影響を及ぼすのでしょうか。
春の締めくくり、グランプリレース宝塚記念は6月25日(日)15:40発走予定です。