情熱の国スペイン。ラファエル・ナダルやダヴィド・フェレールといった世界屈指のプレーヤーを多く輩出しているこの国最大のテニストーナメント、それがムチュア・マドリード・オープンです。強烈な南欧の太陽のもと、ファンも選手も熱く燃え上がる大会が8日に開幕します。
マドリード・オープンとは?
ムチュア・マドリード・オープン(以下、マドリード・オープン)はスペインの首都マドリードで開催される、グランドスラムに次ぐ規模(マスターズ1000)を誇るプロトーナメントです。
マドリード・オープンは全仏オープン同様クレーコートを使用しており、5月半ばに開催されるスケジュールや地理的に近いこともあって、5月下旬から6月上旬にかけて行われる全仏オープンの前哨戦として多くの選手が集まることも特徴の一つです。2014年には錦織圭が決勝に進出し、同大会における日本人最高成績を記録しています(ラファエル・ナダルに敗戦)。
昨年の結果
2016年の男子シングルスは、錦織圭を準決勝で破って決勝に進出したノバク・ジョコビッチ(セルビア)がアンディ・マレー(イギリス)を6-2、3-6、6-3で退け、2011年以来2度目の優勝を成し遂げました。その余勢を駆って全仏オープンでも決勝戦で再びマレーに勝利して初優勝を飾り、男子ではラファエル・ナダル以来となるキャリア・グランドスラムを達成しています。
優勝オッズ
【マドリード・オープン2017優勝オッズ】
※オッズは8日午前6時現在
ブックメーカー「Pinnacle(ピナクル)」発表による男子シングルスの優勝最有力候補は、オッズ2.260倍で、地元スペイン出身のクレーコートが抜群に得意なラファエル・ナダルとなりました。
対抗馬は、昨年決勝でマレーを破って優勝したノバク・ジョコビッチ(セルビア)で6.140倍。ジョコビッチは長年ともに戦ったコーチやチームのメンバーに別れを告げて、新たな旅立ちを選んでおり、その変革の行く末が注目されています。
3番手には、世界ランキング1位で2015年の同大会決勝でナダルを破って優勝しているアンディ・マレー(英国)が6.180倍で挙げられています。
4番手がニック・キリオス(オーストラリア)で12.040倍、5番手がドミニク・ティエム(オーストリア)で12.870倍、6番手にスタン・ワウリンカ(スイス)が13.050倍で続き、日本の錦織圭は7番手となる30.150倍のオッズが付けられました。6番手と錦織のオッズ差に大きな開きがあることが今回のオッズの特徴となっています。
注目選手
ラファエル・ナダル
1月に行われた全豪オープンにおける、ロジャー・フェデラーとの壮絶な戦いの記憶も新しいナダル。彼をもっとも特徴づけるのはその圧倒的なまでのクレーコートでの強さでしょう。キャリアで納めた71度の優勝の内、実に51回がクレーコートでのもの。410試合戦って376勝と、その勝率は92%という驚異の数字をたたき出しています。
赤土の上でなら世界最強、いや史上最強の強さを誇るナダルが優勝候補最右翼に挙げられることは何も不思議ではありません。マドリードでは最多優勝タイの4回および最多決勝進出の7回を記録し、同じクレーコートの全仏オープンでも、4連覇を1回、5連覇を1回の計9回もの優勝を果たしています。「赤土の帝王」の行く手を阻むは現れるのでしょうか。
アンディ・マレー
昨年11月、ついに念願の世界ランキング1位をジョコビッチから奪取して以来、その座に君臨し続けているマレー。マドリード・オープンでは2008年、2015年と優勝を果たしており、3度目の優勝に向けて、そしてその先にある全仏オープン初優勝に向けて、意気が上がっているところでしょう。
マレーは、先月末に行われたバルセロナ・オープンに急きょ飛び入り参加したことで話題となりました。バルセロナ・オープンはマドリード・オープンや全仏オープンと同じくクレーコートで行われます。クレーコートでの試合経験を積むためだと本人も明言しており、その力の入れ具合がよくわかります。ナダルが赤土の上で敗北を喫するところを、マレーが見せてくれるかもしれませんね。
ノバク・ジョコビッチ
不調に終わった2016年を経て、ジョコビッチは大きな決断をしました。2006年からともに戦い続けた盟友マリアン・バイダに、フィットネスコーチのゲバルド・フィルグリッチ、フィジオセラピストのミルヤン・アマノビッチら3人との契約を終えることにしたのです。しばらくの間は新しいコーチも付けず、まるでツアーデビューしたての若手選手のように一人でツアーを回るつもりのようです。
彼ほどの地位をすでに築き上げた選手にとって、これは過酷な挑戦となることでしょう。しかし、それだけに、これまでにない新たな強さを身に付けたジョコビッチが姿を現すかもしれません。さらなる高みを目指すジョコビッチに大いに注目したいところです。
錦織圭
怪我との戦い。他のトップクラスの選手たちと比べて体の小さい錦織にはどうしてもそれが付きまといます。4月末のバルセロナ・オープンは右手首の痛みが治まらなかったため欠場しました。全仏オープンへの調整の関係もあり、マドリード・オープンでの復活を予定していますが、万全の状態で臨むのは厳しいかもしれません。
先月24日に発表された最新の世界ランキングでは、錦織は順位を2つ下げて7位となりました。ここで結果を出さないとさらに順位が低下、シード権のはく奪といった負の連鎖にも陥りかねません。世界のトップを目指す錦織にとって、今回のマドリード・オープンは試練の場となるでしょう。
第6シードの錦織は1回戦が免除され、2回戦ではアルベルト・ラモスビノラス(スペイン)とディエゴ・シュワルツマン(アルゼンチン)の勝者と対戦します。