リオ五輪出場を決めた全日本女子「火の鳥NIPPON」は休む暇なく、9日にブラジルで開幕する第24回目の「ワールドグランプリ2016」(ワールドGP2016)に出場し、世界の強豪たちといわゆる“リオ五輪前哨戦”を戦います。
5月に東京体育館で行われたリオ五輪世界最終予選に挑んだ火の鳥NIPPONは、開幕戦でペルー、第2戦でカザフスタンに連勝して幸先の良いスタートを切りました。しかし、第3戦となるライバル・韓国戦ではセットカウント1-3で4年ぶりに敗れて、嫌な空気が漂いました。
続く第4戦のアジアのライバルへと成長したタイには、フルセットまでもつれる大接戦で第5セットには一時は6点差を付けられ、誰もが「リオ五輪」万事休すと思いましたが、そこから描いたような大逆転劇を演じました。第5戦のイタリア戦ではエースでチームの主将を務める木村沙織のスパイクがさく裂し、敗れはしたものの2セットを奪ってリオ五輪出場権を確保に成功。最終的には5勝2敗の3位でリオ五輪切符を手中に収めました。
【リオ五輪世界最終予選「日本対タイ」火の鳥NIPPONの大逆転劇】
火の鳥NIPPONに課された課題は、リオ五輪で一番輝くメダルを獲得すること。ただそれだけです。それには、リオ五輪にも出場する強豪たちとワールドGP2016でいい形を作って、8月に挑むことが求められるでしょう。火の鳥NIPPONがリオ五輪前哨戦でもメダルをしっかりとることができれば、本番に向けて大きな弾みとなるでしょう。
【ワールドグランプリ2016グループ1予選ラウンド日程(全日本女子)】
<予選ラウンド第1週(ブラジル・リオデジャネイロ)>
9日:セルビア
10日:ブラジル
12日:イタリア
<予選ラウンド第2週(アメリカ・ロングビーチ)>
17日:トルコ
18日:アメリカ
19日:ドイツ
<予選ラウンド第3週(日本・京都)>
24日:タイ
25日:セルビア
26日:ロシア
※日程はすべて日本時間
<ワールドグランプリ2016最新オッズと試合開始時間>
※「World GP Women」を選択してください
全日本女子はワールドGP2016でグループ1に所属しており、まずは予選ラウンドで9日から各週末に3試合ずつ計9試合を戦います。そして上位5チームと決勝ラウンドが行われるタイの計6チームによって決勝ラウンドが行われ、優勝が決定します。
いまだ優勝がない火の鳥NIPPONがバンコクで初の金メダルを獲得するのか?昨年の優勝国であるアメリカか?大会史上最多の10回の優勝を誇るブラジルがリオへ優勝カップを持ち帰るのか?イギリスのブックメーカー「Marathonbet」(マラソンベット)がワールドGP2016の優勝オッズを発表しましたので見てみましょう。
【ワールドグランプリ2016グループ1優勝オッズ】
※オッズは7日午後4時現在
優勝候補の筆頭にはブラジル(世界ランク3位)が2.34倍、僅差でアメリカ(同1位)が2.90倍で2強をなしています。3番手には中国(同2位)で6.80倍、4番手にはロシア(同4位)で8.20倍のオッズが付いています。世界ランク5位の日本が次に来てもおかしくはないのですが、5番手にはオランダ(同14位)で14.00倍、6番手にはイタリア(同8位)とセルビア(同6位)で21.00倍のオッズとなっています。火の鳥NIPPONは世界ランク10位のトルコ(36.00倍)に次ぐ8番手タイの51.00倍のオッズとなっています。これはタイ(同13位、51.00倍)と同レベルと見られています。
※世界ランクは、2015年10月6日現在
2008年の横浜大会からこのワールドGPの優勝を仲良く4回ずつ分け合っているブラジルとアメリカが頭一つリードしていることは間違いないでしょう。
オリンピックの開催国となるブラジルは2008年の北京五輪、そして2012年のロンドン五輪で金メダルを獲得しているバレーボール王国で、今回のワールドGPで8度目の世界一を狙います。196センチのミドルブロッカーであるタイーザ・メネセスは、ブラジルを五輪2連覇へと牽引し、また2012年、2013年両ワールドGPでベストミドルブロッカー賞を獲得するなど実績も実力も申し分なしの世界のミドルブロッカーです。出身地であるリオデジャネイロでチームがオリンピック3連覇を果たすには欠かせないチームの柱です。
対する昨年のオマハ大会を制したアメリカは、2010年から2012年大会まで3連覇を果たしており、通算優勝回数はブラジルに次ぐ6回を誇ります。2013年、2014年大会では表彰台にも上がることができないという屈辱も味わいましたが、昨年の大会で見事に雪辱し、リオ五輪で初の金メダルを狙います。チームの司令塔は170センチのコートニー・トンプソンで、昨年のワールドGP優勝へとチームを導くと、今年の北中米バレーボール連盟(NORCECA)のリオ五輪予選では優勝するなど経験豊富な31歳のトスワークに注目が集まります。
この2強とリオ五輪前に対戦する火の鳥NIPPONは、勝機を見いだせるのか?リオ五輪世界最終予選を戦い終えた真鍋政義監督は「こんな戦いをしていたらメダルは到底無理」とリオ五輪でメダル獲得に向けて厳しい見方を示していました。結果的に5勝2敗の3位で出場権こそ獲得できはしたものの、試合内容的には課題の残るものであったことは試合を見ていた方々も感じたことでしょう。
やはり、エースの木村沙織に頼りすぎていることではないでしょうか。もっと言えば、攻撃の選択肢が他チームに比べても少なかったことで、相手に攻撃を読まれてブロックの高さで封じられるパターンが多々見られました。そういう意味では、若き司令塔の宮下遥のもう一段階レベルアップが必要になってきます。木村と長岡望悠のウィングスパイカーばかりではなく、ベテランのミドルブロッカー・荒木絵里香を使ったミドル攻撃や、バックアタックなどを積極的に使うことで相手の守りを崩すことができるのではないでしょうか。宮下の成長が火の鳥NIPPONのワールドGP、そしてリオ五輪での飛躍のカギを握るでしょう。
ブックメーカーのワールドGP2016優勝オッズの評価が低いのは、日本のバレーボールというものが世界的にまだ認知されていない、そして本来の強さを見せつけられていないことが考えられます。とはいえ、下から数えて2番目の評価はどうも納得いきません。
リオ五輪に向けて、日本女子のバレーボール力を世界に見せつけられるか?そういう意味でも注目したいワールドグランプリ2016となりそうです。決勝ラウンドはタイの首都・バンコクで7月6日から10日まで行われます。