過去には『東洋の魔女』と呼ばれ、1964年の東京オリンピックで金メダルを獲得したバレーボール日本代表。そこからバレーボールを原作にした不朽の名作となる少女漫画が生まれました。そして、その漫画を読んで育った世代が『ママさんバレー』を生み、その『ママさんバレー』を観て育った世代が海外移籍を果たしています。また、代表に選ばれた選手が『かおる姫』と呼ばれてアイドル級の人気と注目を集めるなど、どの世代でも女子バレーの人気は衰えることを知りません。
しかし、世界は広く、近年になって『女王』の名を欲しいままにしている代表チームがあります。それは『バレーボール・セルビア女子代表』です。
そんな競争の激しい女子バレーの世界に足を踏み入れてvenuspointカジノで遊びながら、この世界最強の名を欲しいままにするセルビア女子代表の強さを探ってみましょう!
セルビア女子代表の歴史
もし、バレーボール日本女子代表が『東洋の魔女』ならば、『東欧の魔女』と呼べるセルビア女子代表。強さの秘訣はどこから来るのでしょうか?少し歴史を振り返ってみましょう。
1940年代に国際バレーボール連盟に参加した後、2002年までは『ユーゴスラビア代表』、ユーゴスラビア連邦が崩壊後の2004年から2006年までは『セルビア・モンテネグロ代表』、モンテネグロの分離・独立が認めれた2007年からは『セルビア代表』として歴史に名を刻んできました。もちろん、最初から強豪国として名を馳せていた訳ではありません。
初めて出場した1951年に開催された欧州選手権で銅メダルを獲得して以来、名将として名高いゾラン・テルジッチ氏が2002年に監督に就任後も、2003年までは欧州選手権には長らく出場できませんでした。しかし、2006年の世界選手権で1951年以来となる国際大会での銅メダルを獲得します。ここからバレーボール・セルビア女子代表の再建が始まったと言っても過言ではないでしょう。
翌年に開催された2007年の欧州選手権では、世界選手権で銅メダルを獲得した時と異なり、セルビア出身の選手だけでチームが構成され、アニャ・スパソイェビッチとイエレナ・ニコリッチの左右両翼のエースアタッカーコンビの活躍により銀メダルを獲得しました。そのままの勢いで北京オリンピックに出場すると、こちらも5位と健闘を見せます。
その後、スパソイェビッチが突如代表を引退してしまうなど、ショッキングな出来事もありましたが、日本でも馴染みのあるワールドグランプリではレギュラーメンバーではなく、控えなどの選手も連れてくるほど余裕を見せる様になります。
しかし、それもそのはず。2007年の欧州選手権で銀メダルを獲得すると、2011年開催の欧州選手権では念願の初金メダルを獲得します。それを皮切りに、2011年、2013年、2017年のワールドグランプリでは銅メダル、2015年の欧州選手権でも銅メダルを獲得し、2017年と2019年と二連覇を達成します。2016年のリオデジャネイロ五輪では銀メダルを獲得し、2018年の世界選手権では初優勝を飾るなど、テルジッチ政権となってから14個ものメダルを獲得し、『女王』の名に恥じない活躍を見せました。
そんな中、テルジッチが2021年をもってセルビア女子代表監督を退任することになります。開催がコロナ禍で当初の予定より1年後の2021年に開催された東京オリンピックでは、後述のボシュコビッチによる欠点など精彩を欠いたプレーが続き、結果的には力及ばず銅メダルに終わりました。
そして、オリンピックが閉会して休む暇もなく、オリンピックとほぼ同じメンバーを招集してテルジッチ政権で最後の国際舞台となる欧州選手権に挑むも、フル稼働し続けているオグニェノビッチをはじめとした選手達に疲労が見え始めます。それでもセルビア代表は決勝戦へと駒を進めましたが、オリンピックで制したイタリア代表との対戦では遂に疲労がピークに達し、イタリアに破れて銀メダルに留まりました。
代表として活躍する選手たち
次に代表に主力選手として所属するスター選手、既に代表を引退(選手としては現役)した主力級の選手たちを見ていきたいと思います。
ティヤナ・ボシュコビッチ
現役オポジットの中では世界で3本の指に入るほどの名実ともに『最強の女王』として、若干25歳ながら君臨し続けるティヤナ・ボシュコビッチ。セルビア代表としてプレーをしていますが、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ出身であり、姉のダヤナも同じく現役のバレーボール選手としてボスニア代表に選ばれています。また、2021年の欧州選手権ではセルビア対ボスニア戦で初めての姉妹対決が注目の的となりました。
そんな話題性にも溢れるボシュコビッチですが、その193cmの身長を生かしたジャンプ力とリーチの長い腕で円を描く様に流れる腕の振りから放たれるスパイクは破壊力抜群です。世界最高峰リーグであるトルコリーグの所属チームでは、キャプテンを務めるだけではなく、後述のマヤ・オグニェノビッチが代表を引退してからキャプテンの座を引き継ぎ、エースとして着々と成長するだけでなく、チームの精神的主柱としての役割も期待されています。
パワー溢れるスパイクが魅力のボシュコビッチですが、そのパワーを生かしたプレーが逆に仇となって、サーブ時にはボールが相手のコートを超えてしまい、前回の東京オリンピックを含めて1試合で多くて5点も相手に献上してしまう事がありました。その課題を乗り越えることができれば、誰も彼女を止める事はできないでしょう。
マヤ・オグニェノビッチ
前述のボシュコビッチの前に、キャプテンを2012年から9年間務めました。精神的主柱としてチームをまとめ上げるだけではなく、司令塔としてもボシュコビッチをはじめとした、ステファナ・ベリコビッチなどの強力なアタッカー達を自分の手足の如く自由自在に使いこなしながら、試合の流れをコントロールする事に長けた名セッター、マヤ・オグニェノビッチは本当に素晴らしい選手と言えます。
名門レッドスター・ベオグラードでキャリアをスタートさせ、イタリア、ポーランド、トルコなどの世界でもトップの強豪リーグを渡り歩いてきたオグニェノビッチですが、驚くべき点は司令塔としての視野だけではなく、スパイクの打点が最高で300cmにも達するという身体能力です。身長が193cmあるボシュコビッチの打点は315cm、日本でもプレーの経験があるブランキツァ・ミハイロビッチの身長が192cmで最高打点が310cmなので、セルビアが誇る最強の左右両翼コンビである2人に比べると、オグニェノビッチの身長は183cmと10cmほどハンデがあります。それにも関わらず、2人とほぼ同じ打点からスパイクが打てるのは、相手にとって脅威となるでしょう。
それだけではなく、試合中にオグニェノビッチの動きを集中して観察していても次のプレーを読む事ができません。トスと見せかけて相手チーム側のコートにボールを落として点を取るトリックプレーにも光るものがあります。
イエレナ・ブラゴイェビッチ
前述する2人が主力選手として常時スターティングメンバーに名を連ねていたのに比べ、ボシュコビッチと同じくボスニア出身のブラゴイェビッチは、代表ではどちらかというと控えの選手でした。現在、所属するポーランドのクラブチームではレフトを任されていますが、代表ではレフトを務めたり、守備的ポジションであるリベロとして招集されたりすることもあります。それでも、サッカーをはじめとするセルビアが世界に誇る総合スポーツクラブである名門レッドスター・ベオグラードでキャリアをスタートさせ、イタリアやトルコを渡り歩いた名選手に変わりはありません。
所属するクラブチームではキャプテンを務めるなど、精神的主柱であり、代表戦でベンチに控えていても、タイムアウト時に汗をかきながら監督の言う事に集中している出場選手達にタオルを渡したり、常にチームの為に尽くすことができる選手です。
そんなブラゴイェビッチの一番の魅力は、何と言っても『ガッツのあるプレー』の一言に尽きるでしょう。スパイクがブロックされて自分チーム側に跳ね返ってきたら、何度も何度も諦めずにスパイクを打ち返し、味方がレシーブを腕の変な場所に当ててしまっても、ボールがコートの外へ出てしまっても、危険を顧みずにボールに向かって走り、足を延ばし、懸命にボールを拾おうとする場面が試合中何度もあります。
そんなガッツ溢れる『姐御』とも呼べるブラゴイェビッチですが、残念ながらこのガッツに溢れるプレーが本人の魅力であると共に最大の弱点とも言えます。攻撃時にスパイクを相手にブロックされて弾かれると、ボールをチョンっとブロックの頭上を越えるようにトスをせずに、全力でスパイクを何回も何回も同じコースに打ち返します。こういった攻撃の引き出しがアタッカーとしては極端に少なく、相手に行動を完全に読まれている場面が多く見受けられます。また、相手側の攻撃時にはリベロとしてのプレーの経験がある為か、それともボールに対して貪欲である為か、サーブレシーブ時の動きとプレーゾーンが味方のリベロと被るので、結果的にリベロの邪魔をしてしまい交錯プレーにより失点が生まれてしまう事もあります。
オグニェノビッチと同様、惜しまれながら2021年の欧州選手権後に代表を引退。大学の通信課程でスポーツの学位を取得し、2022年シーズンは選手兼コーチとして所属チームで登録され、指導者になるべく最初の一歩を踏み出しました。
まとめ
バレーボール日本女子代表が『東洋の魔女』ならば、『東欧の魔女』と呼ぶに相応しい活躍をみせたバレーボール・セルビア女子代表。いかがでしょうか?チームの事を知るにつれて、彼女達がその名に恥じない成長・活躍を見せていると納得された方も多いのではないでしょうか?
レギュラーメンバーと控えメンバーとの実力に差があり過ぎ、主力選手が1人でも欠けてしまうと力が落ちてしまうという問題をテルジッチ政権の終盤になって露呈してしまったセルビア女子代表。それが原因でレギュラーメンバーをローテンションを組まずにフル稼働で使い続けた結果、有終の美を飾る事ができませんでした。
しかし、ダニエレ・サンタレッリ監督の下、テルジッチ政権ではくすぶっていた控え選手たちが成長を見せ続ける事によって『強いバレーボール・セルビア女子代表』として、今後も世界に名を轟かせ続けるのは間違いありません。黄金世代であろうが、谷間世代であろうが、プラチナ世代であろうが、中心となるティヤナ・ボシュコビッチを筆頭としたスター選手が生まれるのが、チームスポーツの醍醐味ですよね。
弱小国だったセルビアが女子バレー界の盟主となった今、彼女達がどの様な進化を遂げていくのか、見続ける価値はあると思いませんか?