ヨーロッパのみならず、世界中を熱狂の渦に巻き込む自転車の祭典・グランツール。ジロ・デ・イタリア、ツール・ド・フランスと開催されてきたグランツールの年間最後のレース、ブエルタ・ア・エスパーニャが8月25日(土)にスタートします。
情熱の国スペインを駆け巡る3271.4km、23日間の戦いを制し、王者の証”マイヨロホ”にその身を包むのはどのライダーなのでしょうか。
ブックメーカー「NetBet」が優勝オッズを発表していますので、その数字を参考に優勝展望をご紹介していきます。
昨年はフルームがグランツール2冠を達成
2017年のブエルタ・ア・エスパーニャ(以下ブエルタ)を制したのはクリス・フルーム。フルームはこれでツール・ド・フランス(以下ツール)との2冠、通称ダブルツールを達成しました。
ブエルタとツールのダブルツール達成は39年ぶり。1963年のジャック・アンクティル、1978年のベルナール・イノーに続く史上3人目の大記録となっています。
フルームはこの大会終了後のアンチドーピング検査で規定量を超えるサルブタモール(喘息の治療などに用いられる気管支拡張剤)使用の疑いが出て、一時はツールやブエルタからの追放も検討される事態となりました。
しかし10カ月近い調査の結果、アンチドーピング機関(WADA)と国際自転車競技連合(UCI)がフルームの無実を証明。晴れて総合優勝が確定しています。
また、この大会限りで引退を表明していたスペインの英雄アルベルト・コンタドールは序盤の出遅れが響き、総合5位に。それでも事実上の最終レースである第20ステージで勝利を挙げるなど、有終の美を飾りました。
ブエルタ3回、ツール2回、ジロ・デ・イタリア2回優勝という史上屈指の名ライダーの最後に相応しいレースだったといえるでしょう。
マラガからアンドラへ。2018年は地中海をスタートしピレネーにゴールする
2018年のスタート地点となるのは地中海に面するアンダルシア州のリゾート地、マラガ。夏ともなればヨーロッパ中から観光客が詰め寄せるこの地中海の宝石から激しい戦いが始まります。
第1ステージはブエルタでは9年ぶりとなる個人タイムトライアル。そして第5ステージまでは山岳が続く、スプリンターには厳しいコース設定となっています。
第9ステージのゴールはアルト・デ・ラ・コヴァティリャの山頂。その高さは実に1960メートルと、ツール・ド・フランスのラルプ・デュエズ以上の標高となっています。
地中海沿いに東に進んだのち、第2週からコースは北へ。
この週も山岳が続き、上級山岳でのゴールが3日間続きます。第15ステージのゴールであるラゴス・デ・コバドンガではゴール前の急坂がこれまたラルプ・デュエズ(最大斜度11.5%)を超える約20%と、苦しいレースが予想される難関が待ち受けています。
第19ステージ、第20ステージはピレネー山脈に位置する小国アンドラへ。最終ステージのマドリード市街地周回レースがまだ残っていますが、105.8kmのショートコースとなるこの第20ステージが事実上の最終決戦場となります。この日を終えた時点でトップに立った選手が2018年のブエルタ・ア・エスパーニャ王者です。
優勝オッズのトップは初のグランツール制覇を狙うタスマニアの脅威に
【ブエルタ・ア・エスパーニャ2018優勝オッズ】
※オッズは22日午前8時現在
<NetBet 登録方法>
2018年のブエルタ・ア・エスパーニャで優勝候補筆頭となったのはオーストラリア出身の”タスマニアンデビル”ことリッチー・ポート。オッズは3.60倍となりました。
2番手はイギリスのサイモン・イエーツで3.70倍。なお、双子の弟アダム・イエーツも81.00倍のオッズが付けられています。
3番手はコロンビアのクライマー、ナイロ・キンタナで5.50倍。地元スペインのベテラン選手で2009年のブエルタ王者アレハンドロ・バルベルデで12.00倍となりました。
“第4のグランツール”を制したポート、グランツール初制覇なるか
当代きってのヒルクライマーであるリッチー・ポート。クライム時のダンシング率が80%前後と非常に高く、圧倒的なスピードで登り切るだけの体力も持ち合わせています。
今年6月には3つのグランツールに次ぐ格式を誇り、”第4のグランツール”とも呼ばれるツール・ド・スイスを初制覇。山岳の多いスイスでの成功体験は、同じく山岳の続くブエルタでも大いに活かされることでしょう。
今年のツールでは第9ステージで集団落車に巻き込まれ、不運なリタイアとなってしまいました。その鬱憤をスペインの地で晴らしたいところです。
イエーツ、イギリス3人目のグランツール制覇まであと一歩
2016年のブエルタ第6ステージで区間勝利を挙げた経験を持つサイモン・イエーツ。
それから2年がたった今年のジロ・デ・イタリアではフィニッシュ地点の標高が2135m、ラスト4.5km区間の平均勾配8.2%・最大勾配13%という難関コースの第9ステージにおいて、ラスト200mの最終コーナーで集団を抜け出し、勝利を飾る勝負強さを見せました。
最終的に失速して総合優勝こそは逃したものの、第6ステージから第19ステージまでマリアローザを着続ける活躍ぶりで、グランツールを制することができるだけの実力を備えていることを証明しています。
若くして数々の成績を残し、26歳という脂ののった年齢を迎えつつあるイエーツが栄光の座にたどり着く時が来たのかもしれません。クリス・フルーム、ゲランド・トーマスに続くイギリス人3人目のグランツール制覇者となれるでしょうか。
2度目のブエルタ制覇へ、キンタナの準備は整った
標高の高い山岳が連なり、伝統的に強力なクライマーを生み出すコロンビアを代表するライダーであるキンタナ。
総合3位となったツール・ド・スイスでは登坂距離27.4kmという長い上り坂のコースを、そのスタートの時点からスパートを敢行。ポートら後続を見事振り切り、独走で区間勝利を挙げることに成功しました。
続くツールでもわずか65kmという超ショート山岳ステージとなった第17ステージでも独走で勝利し、山での圧倒的な強さを見せつけています。
2016年に続き、2度目のブエルタ制覇への準備は整っていると見ていいのかもしれません。