オジュウチョウサンの障害レース復帰や、障害転向後に圧倒的パフォーマンスを見せ続けている超新星トラストの登場など、日本の障害レースもここ最近は話題に事欠きません。そして、海外に目を向けてみると世界的障害レースの祭典にして総決算。チェルトナムフェスティバルが目前にまで迫ってきました。
欧州競馬においては平地競走よりも障害競走の人気のほうが高いということは、過去の競馬記事においてもご紹介した通り。チェルトナムフェスティバルも1860年に創立され、その人気の高さから2005年には3日間開催から4日間開催へと拡張をされました。
その結果現在ではその4日間で12のG1レース、延べ27ものレースが行われるビッグイベントだけに、当然、イギリスとアイルランドを中心とした競馬ファンも大熱狂。特にレース開幕と共にスターターがテープを挙げる瞬間の大歓声は「チェルトナムロアー(チェルトナムの轟音)」と呼ばれるほどです。
そんな大注目イベントのチェルトナムフェスティバルの中でも、今年特に注目度が高く熱い2レース。ハードル競走のチャンピオンハードルチャレンジトロフィー(障害G1、約3319㍍)。そして、チェイス競走にしてこのフェスティバルの目玉的一戦、チェルトナムゴールドカップチェイス(海外G1、約5331㍍)をご紹介いたします。
チャンピオンハードルチャレンジトロフィー
とある1頭の偉業達成に圧倒的注目が集まるかと思いきや、そこに肉薄する馬たちが現れたことでより楽しみの増えた今年のチャンピオンハードルチャレンジトロフィー。まずはブックメーカー「bet365」が発表しているオッズをご確認ください。
【チャンピオンハードルチャレンジトロフィー2019オッズ】
※オッズは8日午前9時現在
<チャンピオンハードルチャレンジトロフィー2019最新オッズ情報>
2.87倍の一番手評価となっているのが、このレース3連覇の偉業達成の可否に注目が集まるBuveur d’Air(ヴュベールデール)。
一昨年、昨年の同レースを制していることや、これまで20戦16勝2着2回というほぼ完ぺきな戦績を残していることなどを考えると、2.87倍というオッズは逆に「つきすぎ」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
その理由として考えられるのが昨年の休養期間に行った持病の手術。その後今年は3戦して2勝2着1回。レースの結果や内容も悪くはありませんが、やはりこの分評価を下げられてのことでしょうか。果たして歴史上6頭目となる3連覇達成なるか、大きな期待がかかります。
そんなヴュベールデールの3連覇に待ったをかけるべく超強力なライバルホースが出走を予定しています。目下4連勝中と勢いに乗るフランスのアップルジェード(Apple’s Jade)。オッズはほとんど変わらない3.00倍となっています。
昨年のチャンピオンハードルチャレンジトロフィーにも参戦。その時は3着に敗れましたが、注目したいのはここ最近の4連勝の内容でしょう。4走前から順に着差が、11馬身、20馬身、26馬身、16馬身。障害レースでは大差での勝利が珍しくないとはいえ、これだけのパフォーマンスを見せ続けるというのは過去にもなかなか例がありません。
相手関係もここ3走はG1レースということもあり中々骨っぽいメンツ。十二分に評価できる内容だけに、ヴュベールデールと同等の評価を付されるのにも納得がいきます。
そしてもう1頭。この2頭と同じく注目を集めるのがローリナ(Laurina)。オッズは4.50倍となっています。
目下6連勝中であり、昨年のチェルトナムフェスティバルにはノービスクラスに参戦。そこでは18馬身差の圧勝。更に2走前のLRレースではなんと『2頭立て』という状況下で開催。そのレースでは48馬身を付けて見せるなど、未だ底知れない実力を秘めていると感じさせます。
6歳と、海外の障害レースにおいてはまだまだ若輩者ともいえるローリナ。格上の実績馬たち相手でもその素質は通用するのかどうかが大きな見どころとなります。
チェルトナムゴールドカップチェイス
スピード感のあるハードル競走に比べ、チェルトナムフェスティバルの最終日に行われ、5000mを超える距離を戦い抜く大迫力のゴールドカップチェイス。今年の上位評価は3頭で分け合う形となっています。まずはこちらも「bet365」から発表されているオッズをご確認いただきましょう。
【チェルトナムゴールドカップチェイス2019オッズ】
※オッズは8日午前9時現在
<チェルトナムゴールドカップチェイス2019最新オッズ情報>
まずは、8歳馬にして欧州チェイスレース界期待の新星ともなっているのがプレゼンティングパーシー(Presenting Percy)。オッズは4.50倍となっています。
2017年ごろから戦績が飛躍的に向上。昨年のチェルトナムフェスティバルではRSAノービスに参戦し、見事に勝利を挙げました。その後約1年間の放牧明けとなった前走も好メンツを相手に5馬身差以上を付けての勝利。完全に充実期に入ったとも言えますが、今回は前走以上に相手がそろっただけに真価が問われる一戦となります。
手綱を取るのは欧州で最も人気の高いレースと呼ばれる約7キロの超長丁場障害レースであるグランドナショナル(海外障害G3、約6907㍍)を、タイガーロールで制した名手、D.ラッセル騎手。
38頭立ての同レースを制する確かな腕の持ち主であれば、多頭数レースもお手の物と言ったところでしょうか。
同じく4.50倍のオッズを付されているのが、フランスのクランデゾボー(Clan Des Obeaux)です。
昨年、チェイス三冠のひとつであり冬の欧州障害レースの中でもトップクラスの実力馬が集うキングジョージ6世チェイス(海外障害G1、約4828㍍)において、並みいる強豪を撃破して勝利。前走のベットフェアデンマンチェイス(海外障害G2、約4763㍍)も4頭立てながら11馬身差で圧倒。そのダントツのパフォーマンスが目を惹く一頭です。
チェルトナムでの競馬自体も4戦して勝利こそないものの2着が3回と好相性の競馬場。3度目ならぬ5度目の正直を狙います。
5.50倍と上記2頭からわずかながらにオッズで劣るのがアイルランドのネイティブリバー(Native River)。
昨年のチェルトナムゴールドカップを制するなど、実績で言えば最上位に位置することは疑いようがないものの、その後のレースぶりがやや安定していないのが評価を下げられている原因でしょうか。
グランデソボーが勝利したキングジョージ6世チェイスにおいては、着順こそ3着ながら、着差は2着に12馬身差を付けられる完敗。前々走のベットフェアチェイス(海外障害G1、約5143㍍)も、決して相手がそろったわけではないものの2着。
ゴールドカップを制したその実力を発揮できていないというのが実情かもしれませんが、コース形態によって得意不得意が大きく左右されやすい障害レース。チェルトナムのこの舞台でなら逆転も十二分に有り得るでしょう。同馬が連覇する可能性も捨てきれません。
オッズこそ12.00倍と高くはないものの、虎視眈々と『復権』を狙う一頭が居ます。2017年に9連勝をマークした障害界の名馬、シスルクラック(Thistlecrack)です。
2017年2月の腱損傷により1年間の休養。その復帰後、勝利こそないものの前走のキングジョージ6世チェイスはグランデソボーと1馬身ほどの差と、状態は良かったころにかなり近づきつつあると感じ取れます。この大舞台で完全復活となるでしょうか。
障害競走の祭典、チェルトナムフェスティバルは、3月12日から3月15日まで。チャンピオンハードルチャレンジトロフィーは初日の12日に。ゴールドカップチェイスは、最終日の15日に開催予定です。