【ブックメーカー】清崎民喜コラム:2015年にブックメーカー(スポーツブック)やカジノは日本で前進するのか?

ラスベガス

日本にカジノを誘致する―。昨年2014年の臨時国会で満を持して審議された「IR推進法案」(通称:カジノ法案)は、安倍晋三首相の衆議院解散、総選挙によって残念ながら一旦は廃案となった。

自民党圧勝によって新しく生まれ変わった26日からの通常国会では、再び(いや、三度)この「IR推進法案」が提出され、審議される予定となっている。石破茂地方創生担当大臣は先週行われた関西経済同友会の会合で講演し「一極集中解消は今!カジノ導入を」と力強く訴え、地方再生の起爆剤「カジノ法案」を本国会で成立する意欲を見せた。

安倍 晋三石破 茂

現在のところ、カジノ法案が成立した時にその候補地になるのが、先に出た大阪府、そして横浜市だ。大阪府はこれまで通り橋下徹大阪市長と松井一郎大阪府知事の強力タッグの元で進めているようだ。

2015年を迎えて急浮上してきたのが横浜市だ。林文子横浜市長が1月5日の産経新聞で「横浜カジノ構想」をぶち上げたのだ。

橋下 徹 林 文子

「47ヘクタールという広大な空間で、非常に穏やかな水域に囲まれているのは、ハーバーリゾートにとって理想的。IRというとカジノと反応する人もいるが、私が描いているのは子供から大人までが楽しめる滞在型のリゾート施設」(産経新聞より抜粋)

お年玉としてはかなり大きなものだろう。よほどの意欲と自信が感じられる。残念ながら、もう一つの候補であった沖縄は、昨年12月に就任した翁長雄志知事がカジノ導入に反対を表明したために、一歩後退となった。

今年はカジノばかりではないようだ。昨年末には、自民党がプロ野球でtotoを導入する動きを見せていることが報じられた。2020年の東京五輪のインフラ整備などに必要な財源としたい考えが見え隠れする。

そして、昨日13日のことであるが、競馬で海外のレースの馬券を購入できるようにする動きがあることが明らかとなったのだ。政府は国内の競走馬が出走する海外レースの馬券を、日本中央競馬会(JRA)など国内の競馬事業者が販売できるようにする方針を固め、26日に開幕する通常国会で「競馬法改正案」が提出される。

ベット365JRA ロゴウィリアムヒル

現在、日本で海外の馬券は基本的に購入することが出来ない。とはいえ、例えば「凱旋門賞」ならばフランスまで行って現地で購入できるし、海外政府からライセンスを受けて合法的に運営されているブックメーカー(スポーツブック)で購入することも可能だ。「William Hill(ウィリアムヒル)」や「bet365」で馬券を購入することができる。「ウィリアムヒル」は日本のG1レースのオッズも発表しているほど競馬のコンテンツが充実していたりする。

凱旋門賞を走るオルフェーヴル

政府は競馬法改正で日本馬が参戦している海外レースの馬券購入を可能にすることで、低迷する競馬での売り上げにテコを入れたい考えのようだ。自民党競馬推進議員連盟の橋本聖子会長も「海外で活躍する日本馬の馬券を買えるよう整備を進めたい」と昨年末の有馬記念のパーティーで発言するなど、2015年は「カジノ」と「スポーツギャンブル」が大きく動き出しそうな気配を感じている。

NBA ロゴスポーツとギャンブルの話であれば、スポーツの本場・アメリカでも一気に加速しそうだ。「清崎民喜コラム」でも何度も取り上げてきたが、スポーツギャンブルの合法化への動きの旗印となっているのが、北米プロバスケットボールリーグのNBAだ。

NBAのアダム・シルバーコミッショナーが昨年9月の記者会見で「スポーツベッティングの合法化は避けられなくなるだろう」と発言。アメリカでも広く市民に楽しまれているスポーツギャンブルを合法化させるべきだと言い切った。これに呼応して、ダラス・マーベリックのオーナーであるマーク・キューバン氏が100%の支持を表明し、さらに合法化への動きを加速させた。

アダム・シルバー クリス・クリスティ

シルバーコミッショナーはスポーツベッティング推進派で知られているニュージャージー州知事のクリス・クリスティとタッグを結成し、全米でのスポーツベッティング合法化を政治的側面からも推進しようと働きかけている。シルバーは本気でスポーツベッティング合法化を前進させているのだ。

さらに今年に入って前NBAコミッショナーであるデビット・スターン(David Stern)が、シルバーが推奨する「スポーツベッティングの合法化」を支持することを表明したことをイギリスの専門誌「iGAMING BUSINESS」が1月8日付で報じている。

ニューヨークタイムスによると、アメリカ国内で非合法的にスポーツギャンブルにつぎ込まれている1年間の総額は約4000億ドル(40兆円超)と試算されている。スポーツギャンブルを合法化することで、逼迫する国の財政にベネフィットをもたらすことが出来るとの考えから「スポーツベッティングの合法化」の旗振り役をシルバーは務めているのだ。

今の日本にも同じことが言えるのではないか?カジノやスポーツベッティングを合法化することで必要な財源を確保して、例えばなかなか復興が進んでいない東日本大震災の復旧にお金をつぎ込んではどうだろうか。闇に消えていくお金を生み出すくらいなら、合法化して太陽の元に置いた方がどれだけ有益だろうか。

東京五輪 ロゴ世界のギャンブルのメッカであるアメリカネバダ州にあるラスベガスでは、その地に拠点を置くスポーツブック(ブックメーカー)のグループが、オリンピックへのベッティングを合法化するようにアメリカ政府などに働きかけていることが12日わかった。現在、アメリカ国内ではアマチュア選手が出場するスポーツイベントへのベッティングが禁止されているので、それを解禁してほしいというものだ。

オリンピックを賭けの対象にできないのは世界的に見て非常に珍しく、欧州やアジアのブックメーカーならば例外なくオッズを発表している。海外からの多くの観光客を迎えるラスベガスにおいて、オリンピックで賭けをできないのは致命的で「なぜ、オリンピックでベッティングが出来ないのか驚かれる」と関係者は話している。

日本のカジノにおいて、スポーツブックでプレイできるかどうかはまだわからないが、せっかく呼び込んできた海外からの観光客が「できない」ということでがっかりさせるのは非常にもったいない。地域再生や海外からの観光客を倍増させたいのであれば、日本のギャンブルに対する偏見を払しょくし、法律を整備することが必要だ。

日本のカジノやスポーツギャンブルに関する動きが、2015年は特に注目されそうだ。